今年の昼休みもまた、ピンクサロンに走り出していた
気づけば、走り出していた。
昼休みにピンクサロンに向かってよく走っていたのは、ちょうど、去年の今の季節あたりではなかっただろうか。あれから1年が経ち、また、男性器も1年勃ち続けている。
先日、池袋のメンズエステで銀髪ギャルからマッサージを受けたら、頭も、肩も、背中も、腰も、足裏も、全てが凝っていて「凝りやべーwww」と言われながらマッサージをされたのに、股間の付け根のリンパには一切の詰まりがなく、「超リンパ流れてるやべーwww」と言われながら、いわゆる鼠径リンパ節をマッサージしてもらった。身体のあちこちが凝っていようが、男性器だけは絶好調。そんなことはあたかも昔からわかっていたというような気持ちで、躊躇なくその現実を受け入れることができた。それくらいに勃ち続けてきた1年であったし、それと同時に、様々なことが変わった1年でもあった。
まず、走って向かう先のピンクサロンの店名が変わった。ピンクサロンの店名が変わると、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変わる。人格が変われば、運命が変わる。
池袋のピンクサロンは店名が1年続けばいい方だ。風営法の事情はよくわからないが、店名を変えていくことがピンクサロン存続の技法らしい。
ワイが大学生の頃、池袋に「Cawaiiハイスクール」というピンクサロンがあった。その場所には今でもピンクサロンがあるのだが、もうこの5年の間で数えきれないくらいに店名が変わっている。大学の友人の誕生日に「Cawaiiハイスクール」に連れて行ってあげたことが懐かしい。
大学2年生の頃、その「Cawaiiハイスクール」で『3行ラブレターを送って大賞を受賞したら無料券プレゼント』という企画をやっており、100通近くの中からワイの3行ラブレターが見事大賞に輝いた。
貴女を指名した時はいつも、ついつい話が弾んでしまいます。この高鳴った心臓の音を、かき消すために。
こんな3行ラブレターを書いて勝ち取った30分無料券で、どのツラさげてピンクサロンに遊びに行けというのか。店員にも、女の子にも、「あの3行ラブレターの人ね」とバカにされるに違いない。まだ若く、そして若さ故の高い自意識に苛まれていたワイは、どのツラ下げて行けばいいかまで考える余裕を持ち合わせておらず、どの金玉袋ぶら下げて行けばいいか考えるだけで頭がいっぱいいっぱいだったし、ピンクサロンで女の子の服を脱がすとおっぱいおっぱいだった。結局、その無料券を使うことはなかったが、5年前の自分に「俺はどうするべきだったんだ?」と聞かれても、どう振る舞えば正解だったか今でも応えられないのが正直なところだ。おそらく、ピンクサロンに3行ラブレターを送らないような人間として育つことが正解だったのではないか、という考えが頭をよぎらないわけではない。
話を戻そう。この1年で、確かにピンクサロンの店名は変わった。しかし、なにより変わってしまったのは、自分自身の方だ。
1年前は、純粋な気持ちでピンクサロンに向かって走っていたように思う。なんの目的もなく、ただ走った。こんなことを今更、しかも文面で語ったところで誰にも信じてもらえないと思うのだが、ピンクサロンに向かって走るときに感じる太陽の光、生暖かい風、池袋の匂い、そうした環境に触れ合いながら走ることと、ピンクサロンで射精をすること、どちらの方が気持ちよいか1年前の自分に問いかけるならば、真っすぐに「射精」と応えたと思う。それが1年経った今となっては、間違いなく「射精」だ。
この1年間で、知り会いの人が増えた。人見知りなので、ワイのブログを読んでくれている人としか基本的に会わないようにしている。相手は大体自分のことを知っているので、わざわざ知らない人相手に自分をプレゼンするという必要がなくて楽だからだ。
しかし、ブログ経由で人と会うと困ることもある。ブログに書いてあることなんて過去の自分のことだから、今更ブログの内容のことを聞かれたところで、書いた時と同じテンションで応答することは難しい。ワイは、もう過去の自分のことを半ば忘れてしまった。1年前に自分が書いた文章を読んでも、「何言ってんだこいつ」としか基本的に思わない。そんなことに向き合うことが多くなり、少しさびしい気持ちになってきたので、過去の自分に会いたくなった。今回は「過去の自分を思い出したい」という目的で、ピンクサロンに走りだした。そうすれば、1年前に必死にピンクサロンに向かって走っていた頃の自分に近づけるのではないか、という淡い期待があった。
だから、走った。池袋の民には、ワイが昼休みにピンクサロンに走っているように見えていると思うのだが、実のところ、ワイは過去に向かって走っているのだ。かの有名な映画のタイトルを捩るならば「時をかける素人童貞」だ。時をかける素人童貞が向かうピンクサロンは、ピンサロ嬢の口の中に出すにしろ、ピンサロ嬢の手の中に出すにしろ、どちらにせよピンサロ嬢に精子をかけることになる。かの有名な映画のタイトルを捩るならば「精子をかける素人童貞」だ。もはや「時をかける少女」となにも掛かっていない。ワイがかけられるのはやはり、精子だけなのかもしれない。
弊社では、昼の12時~13時に皆が一律して昼休みを取るルールになっている。ワイは去年、何度か昼休みピンサロダッシュを慣行した経験から、自分がいかに厳しい条件に立たされているのかをよく知っている。
池袋のピンクサロンは、多くの店では平日12時に始まる。池袋は交通の便もよく、また、ピンクサロンのレベルも非常に高いので、平日であったとしても12時前にはおじさんたちがお店の前に行列をなし、通りを歩く日本の若者や外国人観光客から「なんじゃこいつら!」という目で見られている。
例えば、池袋東口の「ストリップ劇場ミカド」の隣にあるピンクサロンの開店前の行列に並んだ時の話をしよう。周知の通り、「ストリップ劇場ミカド」と池袋東口の某ピンクサロンは、写真のように、ちょうど道角を挟んで隣り合っている。
今からちょうど2年くらい前、朝の9時半頃に整理券をもらうためにワイは「ストリップ劇場ミカド」の道角を挟んだ隣のピンクサロンに並んでいた。これは皆既日食のような話なのだが、何年かに1度、「ストリップ劇場ミカド」の上映前の行列の末端と、ピンクサロンの整理券の行列の末端がちょうど重なり合い、おじさんが満ち欠けるのを観測できることがあるのだ。
それがまさに2年前の早朝にワイがピンクサロンの整理券の列に並んでいた時に起こったのだが、そうなると困ることに、次に並びにきたおじさんが、どこまでがストリップ劇場ミカドの列で、どこまでがピンクサロンの列なのか混乱してしまうのだ!その時、ワイはまさにピンクサロンの行列の末端にいた。事件は行列の先頭で起きてるんじゃない、末端で起きてるんだ!当時、特に職に就いていなかった罪悪感がそうさせたのではないかと今となっては回想するのだが、ワイはピンクサロンの整理券配布の列の末端で、次に来るおじさんの列の振り分けを自主的に行っていた。いや、正確に言えば〝自主的〟というほど内から湧き出てくる意志による行為なのではなく、それはある種、天からやってくる使命のようにワイには感じられていた。
おじさんの列の振り分けという天命を全うしていると、当たり前のことだが、おじさんとの会話が生まれてくる。列を振り分ける際の会話の流れで、ストリップ劇場の方の列に並んだおじさんが、話しかけてきた。
(2つの行列を目の前にきょろきょろするおじさん)
ワイ「こっちピンサロですよ」
おじ「あ゛~、じゃあ俺゛こっち(ニヤ」
ワイ「はい」
おじ「そっぢはピンサロか!?」
ワイ「そうですね」
おじ「いくら゛!?」
ワイ「指名するんで総額6000円ですね」
おじ「指名込みで6000!?だったら゛俺、2回ストリップ見るわ゛!ストリップなら2回で8000円。こっちの方が安い゛!」
列の振り分けをしてやったのに、突然、ストリップマウンティングを喰らわされた。このおじさんは、ピンクサロンとストリップという比べるべきでないものを比べ、また、「ストリップは1回4000円だからこっちの方が安い」と言えば良いところを、「2回で8000円!こっちの方が安い!」と、なぜか2回分の料金を提示し、その2回分の8000円という値段がピンサロ1回6000円の値段を超えてしまっているので説得力も限りなく失われてしまっている。私たちが何気ない日常生活の中で、フッと身体が軽くなるような〝自由〟を感じる時があるとすれば、このようなおじさんと出会った時だ。おそらく、このおじさんはこの日、2回ストリップを見る予定に違いない。
最近の池袋は観光客も多く、特に西欧人のコミュニティの中で、このユニークな〝ピンクサロンに列をなすオジサンたち〟が1つの観光スポットになっていて、Web版のNew York Timesでも長め記事として取り上げられたこともあるというのが、ワイが聴いたばかりの最新の幻聴だ。
池袋のピンクサロンはそんな行列をなすほど人気なもんだから、口開けの12時に行くと空いている女の子なんていない。基本的に1プレイ30分だから、次の12時30分に行けば空いている女の子もちらほら出てくるが、12時半に行くとプレイの終わる時間が13時なので、オフィスに戻るのが遅れてしまう。昼休みピンサロダッシュは、素人が思い描いているほど簡単なものではない。
しかし、この日は幸運なことに、昼の11時40分に突然上司に呼び出され、そのままプロジェクトの会議を行い、その会議が12時半終わった。
上司「12時半になっちゃったから、昼休みは13時半まででいいよ」
チャンス。俺は、走り出した。わき目も振らず、一目散にピンクサロンへと走った。ピンクサロンで遊ぶことを想像するだけでイチモツは少し元気になり、そんな状態で一生懸命に走っているもんだから、イチモツはもうズボンの中でブルンブルン飛び散っている。言うなれば〝イチモツ散〟だ。言い直そう。俺はわき目も振らず、イチモツ散にピンクサロンへと走った。
ワイ「フリー何分待ち?」
店員「フリーならすぐ行けます。生理の女の子がつく場合もありますので、その際は下のお触りなしでお願いします」
ワイ「おk」
店員「マウスウォッシュ3回お願いします」
ワイ「シュッ、シュッ、シュッ」
店員「お手洗いはよろしいでしょうか?」
ワイ「おk」
店員「それではご案内です」
勝った!すぐにプレイルームへと通された。12時半に会議が終わったことを好機だと思ってイチモツ散に走りだした俺はやはり間違っていなかったのだ!今回は案内される前に爪のチェックがなかった。爪のチェックがないということは、こいつは粘膜を触れる権利の無い人間だと暗黙の内に告げられたことを意味する。つまり、生理でパンツが脱げない女の子が来るということだ。そんなことは関係ない。今日、俺は1年前の俺に会いにピンサロに走って来たのだ!
プレイルームでウーロン茶を飲みながら待っていると、
風嬢「こんにちは。はじめまして~」
と、女の子が現れた。ショートヘアで、体型がたくましい女の子だ。さっそくイチャイチャしながら服を脱がせていくと、しっかりとした肩幅に、豊満なボディが登場。やけにたくましい体型だ。この女の子は、何かスポーツをやっているに違いない。
先日、デリヘルでプレイ終わりに女の子と一緒にお風呂に入りながら、こんな会話をした。
風嬢「ねぇ触ってみて!私の脚の筋肉すごいでしょ!」
ワイ「本当だー!すごいっ!なんか運動してたの!?」
風嬢「してたっ!」
ワイ「えー、待って待って、答え言わないで!筋肉だけで何のスポーツしてたか当てるから!!!」
風嬢「ごめん、それは無理」
ワイ「えっ...」
風嬢「答え、言えないから」
ワイ「あっ...」
風嬢「...」
ワイ「...」
そんなトラウマが植え付けられてしまったのだが、やはり筋肉質な身体を見ると、なんのスポーツをしていたのか気になる。思い切ってピンサロ嬢に「なにかスポーツしてるの?」と聞くと、「野球やってたの」と気軽に教えてくれた。そうか、野球か。肩幅がしっかりしているのも頷ける。気づいた時には、ストレートの握りでおっぱいを揉んでしまっていた。
しばらくイチャイチャしながらキスを嗜んでいると、
「あぁ~っ、もうダメ!これ以上キスすると気持ちよくて仕事にならない!」
そう言って、彼女はワイにギュッと抱き着いてきた。それがキスを拒否する仕草だということも、経験値の増えた今のワイなら知っているし、なんならワイが初めて五反田のピンサロに行った時に
「だめよ、あなたのキスは優しすぎるわ」
と、お姉さんが言ってきたのも、非常にテクニカルなキスの拒否の作法であったことを、今から遡及的に解釈することだってできるようになった。
「今日は生理だからパンツ脱げないの。ごめんね。でも最近下っぱらが出てきちゃったから、隠せてよかった」
そんなことを照れながら言ってきたピンサロ嬢の下っ腹に目をやると、確かに綺麗に膨らんでいる。周囲より少し盛り上がるはずの恥丘も、下っ腹が膨らみ過ぎてただの曲線の一端に甘んじてしまっている事態だ。ワイがそんな下っぱらに視線を落としたことに気づいたのか、ピンサロ嬢は
「うふふ」
と、笑った。ワイもつられて
「デュフフw」
「誰も端っこで泣かないようにと、君は恥丘を丸くしたんだろ」
なんて甘い言葉をかけることができる人間だったならば彼女の心を虜にできたかもしれないが、現実の自分は体格の良い彼女に個室の端っこに追いやられながら手コキをされ鳴いているのだった。
「あっ、だめっ、あっ、あっ、きもひぃっ、イクッ、イッ」
男性器の先から、憎しみ、妬み、不安、疫病、苦痛、欠乏など、ありとあらゆる災いが溢れだし、人間の世界に飛び散った。慌ててピンサロ嬢がすぐに口で蓋をし、ピンサロ嬢の口の中には最後に一つ、亀頭だけが残った。
「すごい!いっぱい出たねっ!」
「デュフフw」
おしぼりで身体を拭いてもらい、服を着る。ピンサロ嬢から名刺を受け取り、最後にお別れのハグをし、オフィスへと急いで戻った。時計を見ると、時刻は13時17分。47分間の出来事であった。