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120分

 最近、M性感やらメンズエステやら、手に職を持っている女性が働いている風俗に遊びにいくようになってきた。新人を指名するとき以外は、120分前後の時間で入るようにしている。というのも、高い技術を持っていて、その上サービス精神旺盛な女性にとって、60分くらいの時間で入られてもサービスの時間が短すぎて十分にサービスできないという気持ちになるからである(らしい)。

 3か月くらい前、とあるM性感の女性を指名した。60分で入った。すると、開口一番
『今日はご指名ありがとうございます。っていうか、60分じゃ何もできないからーっ!笑』
と言われ、そういうもんなのか、と初めて知った。
『私のブログ読みましたか?最低でも120分で入ってくださいー!きゃはは!』
とも言われ、その日は軽い面談と、浣腸打って10分ほど攻められただけで終わった。特にイキもしなかった。
『あとオナ禁は必須だから!若い子は2週間はオナ禁してほしいな!』
これで2万円。つい最近まで無職だった若造には高い授業料だ。

 というかブログは読んでくることが前提だったのか。どれだけハードルが高いんだ、と思ったが、そこはM男。ちょっと理不尽なハードルを課されるのには嬉しいものがある。生活にハリが生まれる。

 実際にブログを読んでみると、確かに指名の条件が書いてあった。120分って書いてあった。オナ禁もすごい推奨されてた。風俗嬢のブログなんてお客さんへのお礼か、snowで撮った写真か、今日食べたご飯の話が書いてあると思っていた。私の認識が甘かった。他にも手に職持ってる系風俗嬢のブログを覗きこむと、オーガズムの研究などの有用な情報がたくさん載っているし、指名するための条件も書かれていたりするものもある。そんな世界が広がっていただなんて。

 2週間オナ禁してまた行こうかな、と思ったが、これが続かない。オナ禁すると仕事の勉強が全くできなくなる。そういえば私は中学の頃から勉強する前に一発抜いてからじゃないと勉強できないタイプだった。勉強漬けの新入社員にはこれは厳しい。
 いや、なにより件のM性感嬢に対する信用がなかった。それは彼女が悪いというわけではなく、ネットにはあまりにも風俗の情報が散乱しすぎていて、他に技術も高く素晴らしい女性がたくさんいる(ように見える)からだ。わざわざ苦労して1人の女性と関係を築くより、関係を築かなくても最高の技術で気持ちよくさせてくれる女性がどこかにいるのではないか!?そんな夢がネットにはあるように見えてしまう。ってか多分ある。そんなんだからオナ禁なんて続かない。

 その間、ほかの風俗にも行く。他のM性感に行ってみたり、メンズエステに行ってみたり。もちろん、技術力がありそうでサービス精神が旺盛そうな女性を指名する。得たばかりの知識で、120分前後の時間で指名する。そんでやってほしいオプションもつける。確かに120分あると、『あれやって、これやって』って、こっちもやってほしいことが気軽に言えるし、なにより女性の方もすごい心に余裕をもってサービスをしてくれる感がある。会話もゆっくりたくさんできていろんな話も聞ける。やっぱ120分くらいはいい時間なのかもしれない。

  一度、とあるM性感で50分で入ってみたら、めちゃくちゃ優しくてサービス精神が旺盛な女性が出てきたのであるが、いろいろ考え事をしているのか、眉間に頻繁に皺が寄って、会話をしてもどこか上の空。というか、たぶん残りの時間でどのくらいのサービスができるのかで頭がいっぱいいっぱいになっている感じだった。あまりに頑張っている感が伝わってきてしまうので、『こんなに頑張ってくれるから僕ちんもしっかり射精をしなければならないっ!』みたいに、こちらにも変な使命感が湧いてきてしまう。こういうのが湧いてくる時に限って射精はしにくくなる。結局いろんなサービスを浅く広く受けた末に、『やばいっ!もうすぐ時間だ!手コキ!手コキ!』みたいなノリで、せわしない手コキで発射をすることになった。

 やっぱり120分くらいがいいらしい。あのM性感嬢が言っていたことは一理あったのだ。いや、二理も三理もあるかもしれない。少しそのM性感嬢に対する信頼感が増したので、オナ禁を真剣に始めてみた。筋トレの器具を購入し、毎日オナニーをする気力がなくなるくらいに筋トレをした。なんとか1週間のオナ禁に成功したが、その週の仕事は恐ろしいくらいに壊滅的だった。なんも頭が働かない。そんでいつの間にかちょっとマッチョになったりもしていた。次の週は仕事でなぜか難しいプレゼンを任されてしまい、猛烈に勉強をしなければならない週なので、これ以上のオナ禁は無理だと判断し、1週間のオナ禁で件のM性感嬢に会いに行った。もちろん120分。300記事くらいあるブログの記事も全て事前に読んでおいた。

オナ禁はしてきたの?』

『1週間ね』

『いいね!自分のオナ禁がどれくらいがいいか勉強してみるといいよ。今日は1週間だから、今度は2週間とか1か月とか。いろいろ試してみるといいよ』

『うむ』

と、また二理も三理もあるような会話をした。

『ってか前より筋肉ついてない!?』

 あんたのせいや。

 120分ふんだんにサービスをしてもらった。乳首の開発とドライオーガズムと潮吹きなど、要望したものがあれよあれよという感じでクリアされていった。やっぱすごい人じゃないか。この人が言うことにはなかなか信頼がおける。

 攻められている最中ずっとアイマスクをしていた。私は自分の意識を飛ばすには妄想の力が不可欠であり、視覚情報は完全になくしてもらった方がいいからだ。はじめの軽い興奮の間は、頭の中に浮かんでくる複数の妄想の中を渡り歩いている感じがある。私の妄想の性質上、現実で出会ったことがある人でしか妄想ができない。だから、ほとんどは学生時代の同級生か風俗嬢である。いや、もはやほとんど風俗嬢である。前立腺や乳首を刺激され、興奮が増してくると、それに比例するように妄想も洗練化されていって、複数の妄想の中からどれか1つの妄想の選択を決断し、その世界に入り込まざるを得ない状況になってくる。それは、自分がある1つの妄想を積極的に決断していくというよりかは、刺激が追い求める方向に勝手に決断されていくというような感覚。だから自分でも自分が何を選択するのか半ばわからないのだけれど、私の頭が最後に選択した妄想に登場してきたのは、50分で指名され、どのサービスをどれくらいやろうか考えることで頭がいっぱいいっぱいな、あのM性感嬢の眉間に皺の寄った表情であった。