タピオカジュースと4人のヘルス嬢
4月のとある日。その日は夏のような気候で、池袋の某デリヘルを利用した。やってきたのは、黒髪清楚系の、私よりも3~5歳くらい年上のお姉さんだった。ホテルのインターホンが鳴ってドアを開けると、お姉さんの顔が見えるよりも先に「今日は暑いね~!」という声がドアの隙間から聞こえた。ドアを開けてからこちらの顔が見えるより先に話をし始めてきたデリヘル嬢はこれまで2人だけ会ったことがあり、2人とも常軌を逸するほどに明るい性格の女性だったが、彼女もまた例に漏れず明るすぎてキマッているような表情をする女性だった。
部屋に入るなり彼女がベッドの上に腰を掛けたので、私も隣に座った。
「ねぇねぇねぇねぇ!私ね、この前はじめてタピオカジュース飲んだの!飲んだことある!?」
「飲んだことないです、最近流行ってるみたいですよね」
「うん!飲んだことないなら、 今度飲んでみてよ!」
「そんなに美味しかったんですか?」
「うーん、そうでもなかったんだけど」
「じゃあなんで勧めてくるんですか?」
「お兄さん飲んだことないなら、はじめて飲んだ時の感動を共有したいと思って!私が今日はじめて飲んだから、ただそれで感動してるだけなの!」
どうやら、タピオカそのものよりも『流行っているタピオカを初めて飲んでみた』という体験の新規性を共有したいようだった。自分の欲望のあり方に関してえらい自覚的で、明瞭な話し方をしてくる人だと思った。ちなみに、彼女のプレイはめちゃくちゃにエロかった。
3日後、池袋の某ヘルス店に行った。小雨が降り、肌寒い日だった。平成最後の日だった。フリーで入ったら、凄く身体の線の細い子がやってきた。会っていきなり「私、胸小さいけど大丈夫ですか?」と言ってきた。挨拶よりも、名を名乗るよりも先に、そのように言われた。「さっきもね、お客さんに『細すぎるだろ!』って凄く怒られたの!」そう言いながら、苦笑いよりかは少し嬉しそうな笑みを浮かべるような女の子だった。プレイが終わった後、ベッドに寝転びながら、互いの出身地の話をしていた。彼女は最近、地方から越してきたようだった。それから急に、タピオカの話をし始めた。
「ねぇ、タピオカ飲んでる人ってバカだと思わない? 流行ったからって、みんな急にお店の前に並びだすんだよ。大して美味しくもないのに。本当はあの人たちはタピオカを飲みたいんじゃないと思うよ。東京の人ってバカばっかり。あの人たちは、自分が本当にハマってるものとか、無いんだと思う」
こんなにも東京の人間に偏見を持っている子が未だに存在しているのかと思いながらも、よくよく考えれば私も上京したての頃は同じようなことを考えていたのを思い出した。
「うーん、じゃあ君は何が好きなの?」
「カニカマ!知ってる?セブンイレブンのカニカマ、凄く美味しいんだよ。今日も持ってるよ!」
そう言いながら、彼女は鞄の中から5本入りのカニカマと、練りからしのチューブ、それから、生しょうがのチューブを取り出して見せてきた。カニカマは、ドン・キホーテのカニカマだった。ちなみに、彼女のプレイは破壊的にエロかった。
次の週の仕事終わり、また池袋でデリヘルを利用した。もっと言えば、池袋でもどこでも派遣してくれるデリヘルを利用して、池袋に呼んだ。19時半の予約をして、18時半にお店に1時間前の確認の電話をし、スムーズに19時20分にはホテルに入って、部屋番号をお店に伝えた。予定通り19時半ちょうど辺りに女の子が来て、挨拶をすると「昨日の夜に『明日19時から予約入ってます』ってスタッフに聞いたんだけど、お兄さん今日来る時間マジ間違えたん?」って、理不尽にキレられた。お嬢様のような明るい色の清楚なワンピースに、ピンク色のキラキラしたリュックを背負ってる、20代中盤くらいの、いわゆる〝女の子らしい〟女の子だった。「可愛いですね」って言ったら、「いや、私、中の下だから!」って、すごい剣幕で言われてしまった。それでも「いやいや、可愛いですよ」って言ったら、「フフッ、フフッ、そんなことないよー」って少し笑いながら言ってくれた。顔を上向きにして肩を震わせながら「フフッ、フフッ」って、低い声で笑う女の子だった。
プレイが早く終わってしまったので、布団の中に潜りながら会話をした。布団を掛けるには室内が暖かすぎて、太ももに汗が滲んでいた。
「最近ね、女性用風俗に行きたいと思ってんの」
「そうなんだ、相手が男性のとこ?」
「そう」
「へぇー、そういうの行ったことないんだ?」
「うん、今までは歌舞伎町のホストにハマってたけど、もうホストは22の時に飽きた」
「そうなんだ。ホストにハマってた人で、女性用風俗に目覚めた人の話もたまに聞くよ」
「わかるー、だってホストみたいなかっこいい人いるし、1対1で相手してくれるんだよ?」
「それは嬉しいよねぇ」
「しかも、2時間で2万もいかなかったりするからね。サンキュー並みじゃね!?」
なんてヘルス嬢的なフレーズなんだろうって思った。『サンキュー』ってのは、30分3900円を謳っている激安デリヘルのことだ。1年前、レズ風俗に行きたがってる池袋のホテヘル嬢と話をした時、「デートコースより前に、まずはヘルスコースで様子見っしょ」と言われ、この子はなんてヘルス嬢的なんだと思ったが、女性用風俗の話をした時に「サンキュー並みじゃね!?」というフレーズが出てきた彼女は、もっとヘルス嬢的な人だと思った。
「はぁ~、最近働きすぎて疲れてるの」
「そうなんだ」
「来週末、大きなお金が必要だからさ。今週は睡眠時間削って、頑張って出勤増やしてるの」
「大変だねぇ」
「はぁ~、タピオカ飲みたい」
彼女は、疲れているようだった。それから、シャワーを一緒に浴びてホテルを出た。「フフッ、フフッ」って、低い声で笑う彼女だったが、素股で腰を振っている時だけ急に高くてか弱い声を出してきたので、ギャップがエロかった。別れ際に「凄くエロかったですよ」って言ったら、「それ、いい意味だろ。ありがとな」って言われた。
また次の週の土曜日に、池袋のデリヘルを利用した。茶髪のロングヘアの、20代前半でも後半でもおかしくないような、年齢不詳系のきつい顔の美人さんがやってきた。
「お兄さん、今日仕事なん?」
「夕方からちょっとだけね」
「仕事の前に抜いてちゃんと仕事できるん!?」
「むしろ仕事の前に抜いた方が集中できますね」
「まじかぁ、お兄さん面白いなぁ」
「お姉さん、めちゃくちゃ喋りやすいですね」
「九州の飲み屋で働いてたからなぁ」
「だからそんなに声が低いんですか?」
「これは元からや!」
こちらが服を脱がせば、大きく万歳をし、ベッドに入れば、上半身を仰け反らせながら大きく伸びをするような、自然体な女性だった。プレイが終わって、シャワーと着衣を終え、時間が来るまでソファに座って喋っていた。
「なぁお兄さん、私よくSって言われるんだけど、Sやったと思う?」
「Mなんじゃないすか。Sっぽく見えるのは、顔がきついだけで」
「ふふっ、そうかもなぁ」
タイマーが鳴って、一緒にホテルを出た。この日は、池袋北口にある、安くて、部屋がいっぱいあって、風俗嬢と風俗客ばかりが出入りするホテルの、9階の部屋を利用していた。廊下で待っていると、下りのエレベーターが9階に到着した。
「エレベーター途中で誰か入ってくるかなぁ」
「風俗客ばっか使うホテルだから、途中で止まると思うよ」
「それじゃあ私、止まらない方に賭けるわぁ」
「止まるっしょ」
そのままエレベーターは一度も止まることなく、1階に到着した。
「やったー、私の勝ちやぁ」
「止まらないなんて珍しいわぁ」
1階に到着してエレベーターのドアが開くと、3人の女性が縦1列にエレベータの前に並んでいた。みんなスマホをいじりながら、下を向いていた。ラブホテルに1人で来ているということは、デリヘル嬢かもしれなかった。
「ターピオカ飲みてぇぇええええっ!」
フロントに鍵を返しに行く途中、急に隣を歩いていた彼女が天に向かって叫び始めた。突然どうしてそんなことを言いだしたんだという思いと、ヘルス嬢連続タピオカ記録を4に伸ばせたことのおかしさもあり、「なんで!?なんでそんなこと急に言いだしたの!?」と聞いたところ、先ほどエレベーターから出た時にすれ違った女性3人の内の1人が、タピオカジュースを飲んでいたからということだった。ちなみに、彼女のプレイは快活にエロかった。