なぜ風俗レポを書くのか?
大学生の頃から、風俗レポにはまっていた。風俗レポとは、自分が風俗に行った体験談をレポートにして、風俗レポサイトなどに投稿することである。
風俗レポは結構お金になる。1つの体験談で5000円~1万円もらえるサイトはざらにあるし、実績を積んでサイトの管理人と信頼関係を築けたら『プレイ代全額負担するから〇〇について調査してきてください』な~んておいしい話がこぼれてきたりもする。
遊びに行く風俗店の業態や、風俗レポサイト、1か月に風俗に足を運ぶ頻度などを調整すれば、ほとんどプレイ代を払わずに風俗遊びができちゃうのも夢ではない。ライター業が読者モデル化したなんて言われる昨今、文章の素人でも頑張ればそんな夢のような生活が送れるのだ。
そんな風に、金銭的にお得という理由ももちろんあるが、それ以上に、風俗レポを書きたくて書きたくて仕方がないという情熱もある。いや、情熱というよりも、性癖に近いかもしれない。もう風俗レポを書きたくて書きたくて仕方がないのだ。
昔、2chの風俗嬢が愚痴を言う掲示板に『風俗レポ書くきもい奴ら、あいつら風俗で遊びたいんじゃなくて、レポート書くために遊びにきやがる。きもすぎw』なんて書き込みを見たことがあるが、これが図星だったりする。レポするために遊びにいくと言ってもいいくらい、風俗レポを一本書き終えた時には気分がスカッとする。射精の時よりもスカッとすると言っても……過言だ。うん、さすがにそれは過言だ。
風俗レポを書きたいという情熱。この正体は一体何か?真剣に考えてみよう。
風俗で女の子(あるいは男の娘)とイチャイチャ性的な遊びをするからには切り離せないのが〝疑似恋愛〟である。「あの子は俺のことが好きに違いない!」とガチ恋ストーカー客とまではならなくとも、「あの子は俺に興味がある!」「あの子は俺に優しくしてくれる!」という思いにしてもらいたいのが客心である。というか、それを目当てに遊びに行っていると言っても過言ではない。
しかし、ここには無視できない問題もある。いくら風俗嬢が自分のことを大切にしてくれ「この子にとって俺は特別な存在だ!」という気持ちにさせてくれようが、自分は数多いる客の内の1人にすぎないという現実である。仕事だから当たり前な話だが、風俗嬢は多くの客に気に入られようとする。目の前の1人1人の客を大切にしているのは事実だが、本当はその先のもっと抽象的な『客一般』を大切にしているのだ。その過程で「1人1人のお客さんを特別な存在として扱う」という戦略が採用されているにすぎない。
このように、風俗嬢は客の背後に抽象化された『客一般』を見ている。
時に風俗嬢はこの『客一般』のことを『諭吉』と言ったりもする。
このように「自分は特別な存在として扱われるが、それは自分が『客一般』に含まれる限りにおいてである」という事態が、風俗客に刻まれる根本的な苦しみである。
ガチ恋ストーカー客にでもならない限り、風俗客はこの苦しみと向き合わなければならない。しかし、風俗客も人間だ。黙っているばかりではない。この苦しみと対峙するために一つの戦略が採用される。
風俗嬢が『客一般』を見ているのなら、俺が『客一般』になればいい
そう、その戦略がまさに〝風俗レポ〟だ。
風俗レポというのは、いい風俗嬢を共有するために、同志である風俗客に向けて書かれる。なるべく多くの風俗客が風俗嬢選びに失敗しないように、多くの風俗客が読んで納得できるようなレポートが良いレポートだ。そんなレポートを書くには、この風俗嬢のここが良い、ここが悪い、という価値判断をなるべく多くの風俗客と共有できるように己を磨かなければならない。この時、風俗レポを書く自分は『客一般』になろうとしている。風俗嬢が、自分のことを『個別の客』-『客一般』という二重性で見るのならば、自分もまた『個別の客』-『客一般』という二重性を背負えばよい。そうすることによって「自分は特別な存在として扱われるが、それは自分が『客一般』に含まれる限りにおいてである」という苦しみから解放されるのだ。なぜなら俺こそが『客一般』だからである。
もちろん、万人受けする風俗嬢がいないように、万人受けする風俗レポというのは存在しない。しかし、それでも『客一般』のために努力し続ける風俗嬢が存在するのと同様に、『客一般』になるためにレポートを書き続ける風俗客も存在するのだ。
娼婦とだけセックスをし、素人童貞として死んだドイツの哲学者フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェが遺した言葉の中に、以下の有名な格言がある。
汝が闇をのぞき込む時、闇もまた汝をのぞき込んでいるのだ
世界的な素人童貞の先輩に敬意を示し、この格言になぞらえて締めの句としよう。
風俗嬢が『客一般』をのぞき込む時、
『客一般』もまた風俗嬢をのぞき込んでいるのだ
使用した風俗嬢の絵の参照元
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使用した風俗客の絵の参照元
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