僕は手をかざした。すると、風俗嬢はイッた。

 風俗嬢という職業は膣を酷使する仕事だ。

 ただでさえ1日に数人と性行為をするだけでも大変そうなのだが、どうやら風俗に来るお客さんの中にはAVのようなガシマン好きな人も多いようで、いかにガシマンを回避するか、という能力が風俗嬢には求められてしまっている。

 かくいう僕もエロ動画くらいでしか性行為を見たことが無かったので、初めて風俗に行った時には、自分では気付いていなかったがガシマンだったようだ。風俗初体験で潜入した五反田の某風俗店の新人さんから、

「ちょっと…、ごめんね。」

と手マン中の手に優しく手を添えられ、暗黙の拒絶をされた。ちなみにその後には

「あなたのキスは優しすぎるわ…」

と、風俗経験を積んだ今から考えてみても、どんな風俗嬢よりもロマンチックな仕方でキスを拒絶された。

 

 やはり風俗嬢の中でも試行錯誤をしているらしく、様々な拒絶の仕方がある。中でも個人的に一番いいなと思うのは、

「ごめんね、前のお客さんが乱暴でちょっと痛くなっちゃったから、優しく触ってほしいの」

という言葉。

 何かする前に先にこんなことを言われてしまっては、優しくするしかないし、何より、前のお客さんに傷付けられた分、僕がこの女性を守ってあげなければならぬっ!という気合いも入る。そんでもってプレイ終わりに

「優しくしてくれてありがとう!おかげで気持ちよかったよ!」

なんて笑顔で言ってもらえれば、その女性についた風俗客カーストの中で上位ランクに位置づけられたような感じで気分も悪くない。僕のように他の男に対抗意識を燃やしているような人間にとっては尚更効果てきめんだ。気付かぬうちに手マンリテラシーも身につくし、win-winでしかない。本当であろうが嘘であろうが、

「ごめんね、前のお客さんが乱暴でちょっと痛くなっちゃったから、優しく触ってほしいの」

と言っておくのはかなり使えると思う。 

 

 なんてことをつらつらと書いてみたが、この話に関係あるような、ないような出来事がこの前起こった。

 

 池袋の某風俗店での話。

 店頭パネルの写真が可愛かったランキング3位くらいの女の子を指名。学園系のお店にしては珍しく、The・水商売という感じの、茶髪のワンレン、腕にタトゥー、酒やけの声のふくよかな愛嬌抜群の女性が出て来た。始めにこちらの名前を聞かれ、

「山〇です」

と答えると、

「うふっ、山ちゃぁ~んっ」

という感じのノリで強めに抱きつかれ、そのまま獣のようなキスをしてくるくらいに、濃厚なサービスをしてくれる女性だった。プレイの合間合間にもしっかりとコミュニケーションを取ってくれ、雰囲気を作るのがうまく、こちらもノリノリでプレイ。お互いに全裸になり、僕がその女性の脚を広げ、膣に手を伸ばしかけた時、それは起こった。

 

 

「はぁ~~~、んっ、あぁぁぁっ、あぁぁぁあああああ!山ちゃ~~~んっ!!!」 

 

 

 その女性は目を瞑ったまま上を向き、口は半開き、荒い息遣いと共に僕の名前を呼び、座礁した。僕の手はまだ一切膣に触れていない。まだ50㎝は離れている。しかし、彼女は紛れもなくイッたのだ!僕はその光景に驚き、思わず手をひっこめた。そして、何事もなかったかのように、次の瞬間には彼女の濃厚なフェラチオを受けていた。

 

 結構前の話だが、『マツコ&有吉の怒り新党』という番組の中で、こんな話があった。「コンビニでTポイントカードを持ってますか?と毎回聞かれることに怒っています。何かいい方法はありませんか?」という視聴者からのお怒りメールに対して、有吉が「俺もめんどくさいなぁと思って嫌だったけど、最近、解決法を見つけたよ。言われる前にTポイントカードを出しちゃう!」という、まさにトンチのような解答をしていた。

 

 この話になぞらえるのならば、私が手をかざしただけでイッたあの女性は

『どうしても客がイカせようとするならば、先にイッてしまえばいい!』

という技術を身につけていたのかもしれない。現に私は、すぐに手を引っ込めてしまったのだ! 

 いや、あまりに穿った見方をしすぎだろうか。実際に手をかざしただけでイッた可能性も否めない。

 

とりあえず言えることは、

僕は手をかざした。すると、風俗嬢はイッた。

それだけである。