2018年の締めは昼休みピンサロダッシュ
こんばんは。26歳素人童貞です。12月31日も圧倒的孤独です。
笑顔が止まらない 踊るココロ止まらない
動き出すよ 君の元へ 走れ! 走れ! 走れ!
仕方がないので、フリー6000円で入って、すぐに案内をしてもらうと、ショートヘアで落ち着いた性格の、ちょうどいい感じにバイト感覚でピンサロをやっているような女性がやって来ました。ただのバイト感覚ではなく、いい感じにバイト感覚というのは、やる気はそんなに無さそうだけど、心のバリアは無さそうな、人間味の溢れている感じです。
「今日は仕事?」
「うん、仕事だよ」
「あ~、年末だから午前中で終わりとか?」
「いや、仕事納めまだだから、普通に終日仕事だよ」
「営業の外回りのついでとか?」
「いや、デスクワーク。ただの昼休み」
「フンッ」
私は、こういったピンサロ嬢の反応が心底好きでたまらないです。仕事がない人、仕事が休みの人、学生、営業で外回り中の人、いろんな人が昼の時間帯にピンサロに来るようですが、1時間しかない昼休みに来るデスクワークのサラリーマンは本当に稀なようで、心の底から鼻で笑ってくれます。かけがえのない表情です。
少し会話をした後、Yシャツと、スーツのズボンと、靴下と、それから中に着込んだヒートテックを上下共に脱いで、裸になります。ピンサロ嬢の方は、いい感じにバイト感覚でやってる子なので、当然のように何も服を脱ぎません。おしぼりでちんちんを拭かれて、手コキをされながら、ひたすら下着の上からピンサロ嬢のお尻を触ります。
「いいお尻してるね」
「そう?」
「なんか運動してたでしょ」
「うん」
「これは運動してる人のお尻だからね」
「そんなのわかるの!?」
「わかるよ」
「何が違うの?」
「運動してる人はね、お尻を揉んだ時に、内側から戻ってくるものがあるよ」
「え~、今まで何人のお尻を揉んできたの~!」
「デュフフ。アッ」
お尻を揉みながら喋っていたら、あっさり発射させられてしまいました。
「名刺書いてくるから待っててね」
ピンサロ嬢は着衣のままプレイをしていたので、ちんちんをおしぼりで拭いた後すぐに名刺を書きに待機室へ向かってしまいました。その間に私はヒートテック上下2枚ずつと、Yシャツとズボン、それから靴下を再び身につけ、ネクタイを締めます。しかし、右足の靴下が見つからなくなってしまいました。ピンサロの店内は暗く、靴下も黒かったので、ソファの上を手で弄るように探したのですが見つからず、焦っているとピンサロ嬢が戻ってきました。
「どうしたの?」
「靴下が見つからないんだ」
「えー」
ピンサロ嬢もソファの上を手で弄りながら探してくれます。
「見つからないでしょ」
「うん、ここにないってことは、たぶん貴方が身に着けてるんだよ」
「そうだね、ヒートテックを着なおした時に、靴下がどこかに巻き込まれてるのかもね」
「そうだよ、大丈夫。貴方は靴下を身に着けてるから、大丈夫だよ」
そう言われながら手を引かれ、出口まで送ってもらいます。
「お仕事、頑張ってきてね」
まるでドラマに出てくる嫁のようなセリフと共に、襟元とネクタイの位置を直してもらい、そのままお店を出て職場へと歩を進めました。職場へ帰る途中、ピンサロ嬢から貰った名刺を手に取りました。
「今年はどんな年だったー? また来年おいでよ」
そんな言葉が書かれていました。
今思えば、年末に「今年はどんな年だったー?」と聞いてくれるような人が近くにいない人生だったので、少し感動しました。せっかくピンサロ嬢がそんなことを聞いてくれたので、今年を振り返ろうと思います。風俗に行った話はブログ記事にしてあって振り返るまでもないので、それ以外のことで。
タモリ倶楽部がオンエアされた
今年の1月に「痴の巨人 デリヘル・ビッグデータをついに解析!?」がオンエアされた。デリヘル嬢の紹介文を分析して、ランカー嬢とそうでない嬢の紹介文の違いをブログにまとめたら、初期アイコンの怪しいTwitterアカウントから「タモリ倶楽部の番組スタッフです」 って連絡が来たので話に乗っかってみたら、本物でビックリした。タモリさんに実際に会えるという話であるなら、そりゃ迷うことなく行くでしょという気持ちになった。
この前『水曜日のダウンタウン』という番組で、日本人に最も知られている日本人は誰かという調査をしていたけれど、1位がタモリさんだった。
世界大戦後の人口爆発の後の世界で、最も日本人に知られている日本人であるということは、日本史の中で考えてもタモリさんほど同時代の日本人に知られて生きてきた人はいないというわけだ。そもそも昔は日本人自体が少ないわけだし。そういった意味で、動く歴史と出会って会話をすることができたという気がして感動だったし、とにかく畏れ多かった。番組がオンエアされても、会社の人や家族にバレなくて良かった。
電動自転車買った
YAMAHAの電動自転車を購入した。今年で一番よい買い物だったかもしれない。
YAMAHA(ヤマハ) 2018年モデル PAS BraceXL
例えば池袋の場合、徒歩だったら風俗店の受付所やラブホテルまでに15~20分かかっていたところ、5分くらいで到着できるようになった。電動じゃない自転車だと自転車を漕ぐにも労力を使わなければならない面倒くささがあるけど、電動自転車はほぼ労力いらずに勝手に走ってくれるので本当に尊い。何より漕ぎ始めがスムーズなのがよい。普通の自転車だと、信号で止まる度に労力のいる漕ぎ始めが発生するが、電動自転車は漕ぎ始めも労力いらずなのがよい。ポケモンの自転車と同じ感覚。だって、ポケモンの自転車は漕ぎ始めもスムーズでしょう。電動自転車を買うと、ハナダシティで自転車を貰った後の世界くらいに人生の快適さが変わった。
風俗経営者の知り合い&新宿で飲む機会が増えた
Twitterから知り合ったり、知り合いを紹介してもらったりして、風俗経営者の知り合いが増えた。私みたいなアイデンティティのふわふわした謎の立場の人間とも仲良くしてくれる風俗経営者の人って、性格がねじくれてる変な人が多くて面白い。あと、基本的に皆さん年上で私より遥かにお金を持っているので、いつもご飯を奢ってくれる。ご飯を奢ってくれない風俗経営者を見たことがない。私は風俗に行くのに必死でお金がないので、飲み代を奢ってくれるのは本当にありがたい。感謝してもしきれないので、いつも感謝しないようにしている。
飲む場所は、新宿が多くなった。今まで新宿で飲む機会なんてゼロだったけど、急速に新宿で飲む機会が増えた。
ブログのアクセス元を見ると、実は新宿からのアクセスがダントツで多かったりするので、新宿で飲むというのは思想的に考えると正しいのかもしれない。それにしても私のブログだから新宿からのアクセスが多いのか、それとも一般的にブログというものは新宿からのアクセスが多いのか。他のブログの事情を知らないので、ブログに詳しい人、教えてください。
あと、風俗経営をしているような人は夜型の生活を送っている人が多いので、深夜から始まって朝まで飲むことが多くなった。そのせいで生活が乱れて、口内炎が発生する機会がめちゃくちゃに増えた。
結婚する人が現れた
「素人童貞が私のブログをリツイートしたことによって今の旦那が私の存在を知った」と言い出す元風俗嬢が現れた。ネット上の出会いのきっかけになれた。そのおかげで一度ご飯を奢ってもらいましたが、結婚は一大イベントなので、一度ならず、二度も三度も奢っていただきたい。
「25歳素人童貞のツイートきっかけで知り合った人と結婚した」という元風俗嬢が現れたので、奢ってもらっています pic.twitter.com/IN5OxsJRcJ
— 26歳素人童貞𝒶.𝓀.𝒶.素童 (@sirotodotei) 2018年8月23日
ご結婚おめでとうございます。
本を出版した
ヒッピーみたいな身なりの、何を考えているのかよくわからず、仕事ができるのかできないのかもよくわからない、本当にアイデンティティの不安定な編集者の方がTwitterのDMで連絡をくれ、本の出版をしてくれた。自分のブログが本になるとは全く思っていなかったので、こういった機会をくれ、とてもありがたかった。担当編集者さんとは何度か飲んだけど、結局、何を考えているのかよくわからず、見ているだけで面白い人だった。急にこの意味不明な販促動画を作ってくれたのだけど、この動画の掴み所のない奇妙な感じが、担当編集者さんの全てを表してる気がする。
男の人の、少し小難しくて可笑しく表現する文章が好きで、はじめてブログを読んだ時から気になっていた人の本。
— 『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』新刊11/10発売 (@pinksalondash) October 28, 2018
バカだなぁー、でもいい表現だなぁー、風俗って極めると哲学しちゃうんだなあって担当は感想を持ちながらケラケラしながら校了しました。
早く発売してみんなに読んでほしい!#昼ピン pic.twitter.com/bjNC7W2DYC
本に関しては、Amazonのレビューよりも、読書メーターの書評よりも、風俗嬢の方々に写メ日記で取り上げてもらった機会が圧倒的に多く、出版前には想像もしていないことだったので嬉しかった。出版前は担当編集者さんと「これ発売したら昼休みにピンクサロンに行く人が増えるんじゃないですかね!?」なんて話をしていたけど、そんな報告は今のところ一つもない。
それと、本を出したら、今まで風俗の話をしていない人が風俗の話をしてくれるようになったり、今までただ風俗店や風俗嬢についての話しかしていなかった知り合いが、なぜ自分は風俗に興味があるか等のエモい話をしてくれるようになったりした気がする。
ロフトプラスワンでイベントやった
無名な人間の出版記念イベントでロフトプラスワンほど人が収容できる箱を選ばなくてよかったのでは? という疑念が直前まで止まらなかったけど、当日は142人のお客さんが来てくれて良かった。普通のイベントだったら142人も来てくれるなら、「このイベント行きます!」「イベント行ってきました!」という報告がTwitterでたくさん流れるものなのに、風俗イベントだからかそういったツイートがあまり見られなかった。人はたくさん来たものの、一体どういう人が来たのかよくわからないまま終わっていった不思議なイベントだった。
イベント内容としては、登壇者の方々が司会やトークを頑張ってくれ、ちゃんとイベントっぽくなってたので良かった。私は途中までトークを頑張ってた気がするけど、途中から登壇者の人たちが喋ってるのを見てるのが普通に面白くて、普通に笑って観戦してしまった。トークイベントに登壇するって割と難しいことなのだなと思った。
好きな漫画家や作家の人に会えた
イベントで二村ヒトシさんを呼んでお話ができたり、その他にも本を出版した後に知り合いの方に漫画家さんや作家さんを紹介してもらえたのですが、悉く自分が大学生の頃に影響を受けていた人たちに実際に会うことができ、皆さん私の本を読んでくれて感想まで言ってくれたので、万々歳でした。本の売れ行きはそんなに良くないみたいなので、担当編集者さんや出版社には申し訳ない気もしますが、個人的には憧れていた人と話のできる機会が生まれたので本当に良かったです。
ということで、今年は風俗以外で人と関わる機会が多い一年でした。私はあまり社交的な人間ではなく、気難しい部分もあって他人とうまくいかないことも多々あるので、上手に関わってくれている方々に感謝です。来年も適度に仕事をしつつ、風俗を楽しめればと思います。来年もどうぞよろしくお願いします。
ちなみに、ピンクサロンで見つからなくなってしまった右足の靴下ですが、仕事が終わって家で小便をする時に、ヒートテックのズボンの中からポロっと出てきました。
新大久保イラマチオ
10月初旬のとある金曜日、池袋西口の『ジョナサン』で、夜中の0時頃から友達と風俗について話をしていた。池袋東口のデリヘルを利用してデリヘル嬢にラーメンの話をすると『麺処花田』を勧められるんだ、という話を友達にしてみたら、その友達も、池袋東口のデリヘルでデリヘル嬢に『麺処花田』を勧められたことがあると言っていた。
それから、新大久保の話もした。十中八九、ただの偶然であることもわかっているのだが、新大久保でホテヘルやデリヘルを利用すると、プレイ終わりに女性の方が新大久保駅まで送ってくれることが多い。風俗嬢は身バレを恐れる職業であるし、お客さん側だってプレイ後に一緒に街を歩きたいかは定かではない。だから普通であれば、帰り際に「ホテル一緒に出ますか?」と女性から聞かれることもあるし、一緒にホテルを出たところで、ホテルを出てすぐのところで「ありがとう!またね!」ってお別れするものだ。それなのに、新大久保で出会った風俗嬢はなぜか「んじゃ駅まで送ってくよー!」と、自然に新大久保駅まで送ってくれる人が多かった。
今年の夏なんて、新大久保駅まで送ってもらったところで、デリヘル嬢に駅前でお別れのキスを求められたこともあるくらいだ。私は子供の頃から、駅前でキスをするような大人は心底汚らわしい存在だと思っていたし、その気持ちは全く変わらないまま大人になった。この前だって、五反田の風俗に行く途中、五反田駅の改札前のところでキスをしてる熟年の男と女を見かけたが、嫌な気持ちになった。その嫌な気持ちの中には、私のような人間が駅前でキスをしたところで、全く絵にならないという事実も含まれている。そんなわけで私は、絶対に駅前でキスをするような大人にならないようにしようと思っていたし、なるはずがないと信じていた。そんな私が、デリヘル嬢に新大久保駅前まで送ってもらった上に、駅前でキスを求められてしまったのだ。ありうる限りの自分の行動の可能性を考えてみたところで、どうしたってキスに応えるしかなかった。だって、目の前にいるのはデリヘル嬢で、私は風俗客なのだから。日が変わりそうなくらいに夜も更けた時刻、私は新大久保駅前でデリヘル嬢とお別れのキスをした。
「キッスしてるぅぅーっ!!!」
近くに立っていた、大柄で、メガネをした、おそらく韓国人であろう男の人に、人差し指を向けられながら大声を出された。なんて、新大久保的なのだろう。
そんな思い出話を友人とひたすら話していると、風俗話が尽きるよりも早く眠気が襲ってきたので解散することを決め、車で家まで送ってもらった。今度は、前々から気になっていた新大久保のホテヘル嬢を指名しに行こうと思うんだ。助手席からそんなことを友人に投げかけていると、家に到着した。眠気は既に限界を迎えており、鍵をかけたかどうかも定かでない中、ベッドに飛び込んで眠りに落ちた。そのまま10時間くらい死んだように眠った。というように自分でも思いこんでいたのだが、小雨の匂いと薄暗い日の光と共に目を覚ますと、時刻はまだ朝の6時であった。たったの3時間で目が覚めたのだ。普段はそんなに短い時間で目が覚めることなんてことはないにも関わらず、である。仮に、平日にいつも起床している8時00分という時刻に起きたのならば、そのあまりにも早い目覚めを己の習慣の責任に帰することも容易だったのだが、そのようにもいかなかった。こんな日には、自分はなにか特別な1日を過ごせる権利を得られたような気分になれる。すかさず、枕元に置いてあったiPadを手に取り、ほんの3時間前に友人と話をしていた新大久保のホテヘル嬢のプロフィールのリンクに飛び、出勤時間のところに目を落とすと「9:00~ 」と記載されていた。実に、3時間後であった。
さっそく、そのホテヘルに電話をかける。ランカーの人気嬢であったので、当日の、しかも出勤の3時間前に予約の電話をかけて枠が取れるのかは甚だ疑問の残るところであったが、口あけ9時からの60分コース1枠のみ予約可能だということだった。やはり、朝早く起きたことには理由があったのだ。
シャワーを浴び、服を着て、歯を磨いてから8時半に池袋の家を出る。明治通りを下るように自転車を走らせ、新大久保駅の近くにある受付所を目指す。向かう先のホテヘルの受付所は、ボロっちいマンションの1室にある。新大久保のホテヘルの受付所というものは、風俗店によくありがちなビルの中ではなく、アパートやマンションの1室など、生活感のある建物の中に位置しているところが数多ある。実際に、他の部屋に一般の人が住んでいるマンションの一室に、お客さんと風俗嬢が行き来しているホテヘルの受付所なんてのもあるくらいだ。この前も、新大久保の別のホテヘルを利用し、プレイ後のアンケートを書きに女性と一緒にマンションの一室にある受付所に戻ったところ、マンションから出てきた一般住民のお婆さんに「こんばんは」と、 ホテヘル嬢が挨拶をしていた。私もつられて「こんばんは」と挨拶をした。お婆さんも「こんばんは」と挨拶を返した。なんて、新大久保的なのだろう。日常と非日常、聖と俗が地続きに共存しているのが、新大久保という街なのである。
明治通りをひたすら下って、大久保通りの直前の松屋が見えたところで、右に曲がる。すると、すぐ左に小道が現れる。その小道に入って前方に目をやると、ペプシの装飾がなされた自販機の隣に、ゲートとしか言えないただのゲートが現れる。
ただただ一直線に続く何の変哲もない道の中ほどに、ただのゲート。一体、なんのゲートなのだろう。それにしても、位置が絶妙だ。なんの意味があるのだろう。おそらく、なんの意味もないのだろう。何かしらの目的があるわけではなさそうだし、ゲートをくぐっても、その先の景色は何も変わらない。それでもやっぱり、ゲートを潜ると、潜る前とは違って、その何の変哲のない一本道が特別な色を帯びる気がしてくる。なんて、新大久保的なのだろう。いつも新大久保へ向かうときはこのゲートをくぐって、向こう側に小さく見える大久保通りに出る。そうして自転車をそこら辺に留めて、目的の受付所へと歩いて向かう。
この日も相変わらずボロっちぃマンションの受付所に到着する。タバコとおっさんの臭いが充満した受付所で、料金の受け渡しと、プレイの流れの説明を受け、近くにあるホテルへと向かう。新大久保駅付近には、以前から「ホテル大山」と「ホテル小山」があって、最近「ホテル中山」ができた。私は優柔不断な人間なので、いつも「ホテル中山」を使うのだけれど、最も新しいから「ホテル中山」が一番綺麗であるし、「ホテル中山」なら、クレジットカード決算だってできる。中途半端が、一番美しく歓待される。なんて、新大久保的なのだろう。
受付所から「ホテル中山」へと向かおうとした矢先、受付所から出てすぐ1分程のところで、黒髪のロングヘアの女性とすれ違った。私は自分で指名した女性のことを写メ日記でしか知らないが、向こう側から来るその人が、おそらく私の指名した女性であるに違いなかった。しかし、もしかしたら私の勘違いである可能性がある。いや、そもそも、ホテルの部屋以外の場所でホテヘル嬢に話しかけることもないわけだし、向こうから来る女性が私の指名した女性であるかどうかなんて、さほど真剣に考える必要もなかった。私が確実に言えること、それは、その女性がセブンイレブンのお弁当が入った薄茶色い袋を持っているということ、それだけだった。その女性とは無言ですれ違い、私は「ホテル中山」へと足を運んだ。
韓国人の若い女性がホテルの受付をしていた。料金を支払ってカードキーを受取り、ホテルの部屋へと入る。すぐさまベッドに腰かけ、iPadを開き、これから来る指名した女性の写メ日記を開く。
「出勤しました! 朝ごはん(*´∀`*)♪」
3分前に写メ日記は更新されていて、朝ごはんを食べているようだった。やはり、私が指名した女性は、先ほどのセブンイレブンのお弁当の袋を持っていた女性だったのだろうか。
もし仕事の後などに遊びにきていたのなら、女性が来る前に歯を磨いて、それから先にちんこだけは洗って時間を潰すものだが、この日は休日で朝に歯磨きとシャワーを浴びてからすぐ来たので、ちんこの不安に苛まれることもなく、しばらくTwitterのブックマークに登録していたメディア記事を読みながら時間を潰すことにした。9時からの予約だったのに、9時20分になっても、女性が来ない。たぶん、朝ごはんを食っているからだろう。そんなことを考えていると、ドアの向こう側から、コツッ、コツッ、コツッ、と、こちらに向かう足音が聞こえ、私のいる部屋の前でその音が止んだ。
ピッ、ピピピピピピッ、ピッ
タイマーをセットしたであろう電子音が、ドアの目の前で鳴り響く。その後、すぐにドアのノックが鳴るかと思いきや、1分ほど静寂な時間が訪れた。もしかしたら、ドアの目の前で足音が止まったと思ったのは私の勘違いで、隣の部屋に向かうデリヘル嬢の足音だったのかもしれない。何気なくもう一度、指名した女性の写メ日記を開く。
「今日も1日、頑張ります!ヽ(*´∀`*)ゞ」
私が写メ日記を確認したまさに9時23分という時刻に、そのように写メ日記が更新されていた。もしかして、今そのドアの向こう側で更新したのだろうか。
コンッ、コンッ、コンッ
ドアのノックが鳴った。そのノックの音は、WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)という無限に拡がる時空間に発信された彼女の「今日も1日、頑張ります!ヽ(*´∀`*)ゞ」という宣言を、ドア1枚隔てたところにいる私が数秒で受信したのだという証拠の音でもあった。彼女の写メ日記が開かれたブラウザを閉じ、iPadを机の上に置いて、ドアを開く。そこには、先程すれ違った黒髪ロングヘアの女性が立っていた。
「はじめまして。あっ」
「はじめまして。どうしました?」
「もしかして、さっき、すれ違いました?」
「すれ違ったと思うよ。セブンイレブンの袋持っていませんでした?」
「やっぱり! あれは朝ごはんですっ!」
「何食べたのですか?」
「明太もちチーズグラタン食べたの」
「明太もちチーズグラタン、好きなんだ?」
「うん。本当はね、キーマカレードリアにしようかと思ったんだけど、待機所で食べるとカレーの匂いが他の女の子の迷惑になるかなと思って。だから、 明太もちチーズグラタンにしたの」
会話を交わしながら部屋に入り、私たちは横並びになるようにベッドに腰をかけた。
ピッ
「タイマー、ここに置いておきますね」
先ほどドアの向こう側でセットしたばかりであろうタイマーのスタートボタンを押すと、彼女はそのタイマーをベッドの横の机に置いた。タイマーを確認すると「44分58秒」。プレイが終わってからシャワーをしてホテルを出るまでに15分を確保するタイプの女性だ。私がタイマーに目を落としているうちに、彼女がこちらに寄りかかるようにハグをしてきたので、こちらも少し遅れてハグを返す。
「い、いい匂いがしまふぅー!」
「え!? いい匂いなんてしないよっ!」
「いい匂いがしまふぅー !」
「え? なになに? なんの匂い? シャンプーかな?」
「いい匂いがしまふぅー !」
シャンプーの甘い香りだろうか、それとも、ボディークリームの匂いだろうか。彼女からは、いい匂いがした。 それから同時に、タンスに長らく仕舞われていたような衣類の匂いもした。人工的なおしゃれな甘い匂いと、生活感の漂うタンスの香りのハーモニー。なんて、新大久保的なのだろう。もちろん、新大久保の風俗嬢がみんなそんな香りを放っているわけではないし、こんな香りのする風俗嬢とたまたま新大久保で出逢ったからといって、それを〝新大久保的 〟 だなんて形容するのは短絡的で、概念に対してあまりにも暴力的すぎる態度ではないかと思う。でも、土地ほどに私たちが偶然的に出逢うものもないんじゃないかと思い直して、やっぱり新大久保的であると思ったし、その匂いを嗅いで私は心の底から新大久保に惚れてしまった。
「シャワー入りますっ?」
彼女がそう口火を切ったので、お互い服を脱ぎ、手を引かれるようにして浴室に向かう。簡単にボディソープで身体を洗ってもらい、イソジンでうがいをして、先に浴室を出る。
「私も身体洗ったら、すぐ出るからね!」
「すぐ」とはどのくらいの時間のことを言うのだろう。「すぐ」という言葉に、今までどれだけ惑わされてきたことか。この前も、仕事相手が「すぐ連絡します!」と言ったので1~2時間で返事が来ると思っていたら、連絡が返ってきたのは3日後で、大変な目に遭った。なんて曖昧な言葉なのだろう。彼女の言った「すぐ」はいつのことなのか。そんなことはすぐにどうでもよくなって、今日の夕飯は明太もちチーズグラタンとキーマカレードリアのどちらにしようか迷いながらバスタオルで身体を拭いていると、彼女が浴室から出てきた。
「体、拭くよっ!」
新しいバスタオルを手に取り、水の滴った彼女の体を拭く。
「えっ、ありがとう。こんなの初めてだよっ」
彼女がそう呟いた。「こんなの初めてだよっ」は厳密に考えれば肯定の意味合いはなく、ただ事実を述べているだけである。それでもやはり「こんなの初めてだよっ」と言ってもらえて素直に嬉しいと思える人間でありたいと思ったのだが、もう今となっては「こんなの初めてだよっ」と言ってもらえても『騙された素人専門店 こんなの初めて・・・~イキまくる女たち~』という池袋のホテヘルの店名が連想的に浮かぶだけの人間になってしまっている自分に気づくだけであった。『騙された素人専門店 こんなの初めて・・・~イキまくる女たち~』で遊んだ客は運が良いと、店員の人にご飯を奢って貰えるらしい。俺も行きたい。
彼女の身体を拭き終えたところで一緒にベッドに寝ころぶ。仰向けにごろんっと寝ころぶと、彼女も仰向けにごろんっと寝ころんで、そのまま3秒ほど横並びで天を見上げた。これはどちらかと言えば性癖がMな人間が2人ベッドの上に集まった時にたまに起こる現象で、2人して仰向けで天を見上げているだけの謎の時間が数秒生じることがあるのだ。
おそらく、Mという性癖よりも職業倫理が勝ったのだろう、3秒天を仰いだところで彼女は仰向けで寝ているのをやめ、私の身体の上に乗り出しておもむろに乳首を吸いだした。舌を見せつけるかのように器用に舐め上げる、のではなく、まるで赤ん坊が生存のために母親の乳首に吸いつくように、私の目を見ながら真っすぐに乳首を吸い始めた。メイクをしたことがない人間でもわかるくらいに灰色のアイシャドウの塗り方の雑さの目立つ瞼に、黒々とした瞳と絵の具のような色の白目のコントラストの綺麗な目で見つめられ、その彼女の表情を見れて良かったなと思っていたところ、なんの脈絡もなしに彼女が私の男性器を口に含み始め、最初こそ舌を出してペロペロと舐めていたものの、徐々に喉奥へと自ら男性器を突っ込み始めた。いわゆる、ディープスロートというやつだ。私の男性器を喉奥まで咥えたところで10秒ほど頭を静止し、突然に顔をあげたかと思うと、舌を出しながら「ヘェッ、ヘェッ」と荒い息遣いをしながら、まるでオーガズムを迎えているかのように身体を震わせて、見つめているのか、睨んでいるのか、あるいは、その両者が混在している視線を私にぶつけてきた。その彼女の反応は、自ら男性器を喉奥に突っ込んだ人間のものとしては、あざとすぎるくらいにあざといものであったが、往々にして、あまりにもあざとすぎる人間というのは実のところ全くあざとくなれていないところが魅力的なのであり、彼女もまた、そのような魅力のある人だった。
しばらく「ヘェッ、ヘェッ」と舌を出しながらこちらを睨んでいた彼女が、ベッドにだらんと無造作に置かれた私の腕に視線を落とす。そのまま私の右腕を小さな手でつかみ、彼女の頭の上に私の手の平が重なるように持ち運んだかと思うと、再び自ら男性器を喉奥まで口に含み始めた。喉奥まで男性器を突っ込む彼女と、彼女の頭の上に乗っている私の手の平。これは、俗に言うところの〝イラマチオ〟なのだろうか。私は一瞬そのようなことを考え始めてしまったが、しかし、よくよく考えてみればイラマチオは男性が女性に強いて初めて成立する行為なのだ。そのように正確に考えるならば、私の目の前で起こっていることは定義上イラマチオではないのではないだろうか。私は彼女に何も強いてはいない。むしろ、彼女が私にイラマチオをするように強いているのであるし、もっと言えば、彼女は私にイラマチオをするように強いるように何かに強いられているような目をしていた。私たちにイラマチオを強いているのは誰なのだろうか。一見、入り組んでいて複雑そうなこの問題を理解するのに、そこまで時間はかからなかった。一見難しそうに見えても、大抵の物事は義務教育の知識の範囲内で理解できるようになっていたりするのが世の常だ。少し日本語から離れて、中学生の頃に英語の授業で習った〝非人称構文〟で考えてみればよいのだ。
It makes us irrumatio.
(ソレが、私たちにイラマチオを強いる)
私たちにイラマチオを強いていたもの、それは、“ソレ〟とし名指せない何者かだ。
「非人称構文では、主語は訳しません。あえて訳すとすれば〝ソレ〟です」
田舎の公立中学校の先生が教えてくれた奇妙な翻訳。日本語にはない表現を無理に訳そうとするときに生じるズレ。そうしたズレた翻訳こそが、私たちの目の前に起こっている現象をかえってクリアに説明してくれることがある。彼女はソレにイラマチオを強いるように強いられているし、私もまた、ソレにイラマチオを強いるように強いられている彼女にイラマチオをすることを強いられているのだ!
It makes us irrumatio !
手先に力を込めて、男性器を喉奥まで咥える彼女の頭をグッッッと下向きに抑え込む。私の手はソレと重なり、私は力を入れて初めて自分の手にソレを引き受けてイラマチオの主人になった。グッッッと抑えこんでから10秒ほど経ったところで、彼女が私の太腿を手の平でタップする。それから更に10秒ほど頭を抑え込んでいると、彼女の身体は震えはじめ、先よりも更に強い力で私の太腿を小さな手で何度も何度も叩きはじめた。頭を押さえつけていた腕の力をフッと緩めると、彼女の頭が上がってくる。
「も. ...ちゃう.....、お餅..出ちゃう...」
彼女は涙をいくつか流していて、時たま舌を出す猫のような舌の出し方をしながら「ヘェッ、ヘェッ」と息遣いをすると共に身体を震わせ、口の周りを唾液まみれにして少し笑っていた。彼女の顔を拾い上げて、口の周りに散らかった唾液に向かってキスをすると、明太子と、それから少しのチーズの味がした。
60分の恋も冷めた瞬間 in 五反田
ちんこでイッた アナルでイッた
イソジンの危機の時代に、乾杯を
こんばんは、26歳素人童貞です。
「この ぶんょしう は いりぎす のケブンッリジ だがいく の けゅきんう の けっか にんんげは もじ を にしんき する とき その さしいょ と さいご の もさじえ あいてっれば じばんゅん は めくちちゃゃ でも ちんゃと よめる という けゅきんう に もづいとて わざと もじの じんばゅん を いかれえて あまりす」
数年前、インターネットで上記のようなコピペが流行した。何の科学的なエビデンスもない説であるらしいが「人間は最初と最後の文字さえ正しければ文章が読める」という話である。上記のコピペを読んだ感じでは、この説は正しいように思われる。
同じように、「出会いと別れさえ印象が良ければ、お客さんが本指名として帰ってくる」と豪語する新宿の元デリヘル嬢がいた。つまるところ、「人間は最初と最後の印象さえ良ければ、良い人に思われる」ということである。風俗客としての経験から考えてみると、これも概ね正しいように思われる。
そこで、26歳素人童貞も同じように考えてみた。「会社でトイレに入る時と出る時に、イソジンでうがいをすれば〝ほぼデリヘル〟になるのではないか?」、つまるところ、「人間は最初と最後がイソジンならば、デリヘルに思われる」という話である。やはりこれも、概ね正しいように思われてならなかった。更に付け加えてしまえば、トイレに入る時にイソジンでうがいをし、個室に入ってウォシュレットをアナルに当て「あぁ、あぁっ、あぁぁんんっ」とアナル責めをして気持ちよくなった後、個室を出てイソジンでうがいをして帰ったならば、それは〝ほぼM性感〟になるのではないか、とも考えた。しかし、よくよく考えてみれば粘膜接触のないM性感では基本的にイソジンでうがいはしないため、〝ほぼM性感〟の夢は早くも頓挫した。
そんなことを考えたので、〝ほぼデリヘル〟の夢を叶えるために、私は半年ほど前、人生で初めてイソジンを購入した。250ml1262円である。
これで、これからのサラリーマン人生、毎日のようにトイレで〝ほぼデリヘル〟を味わえるのだ! そんな大きな期待を抱き、Amazonからイソジンが自宅に届いた当日、まず自室で1うがいしてみた。イソジンの独特な消毒薬の香りが口の中に広がった直後、私の視界は突如、真っ暗になった。違うのだ。いつもデリヘルでうがいをしているあのイソジンの味とは、全く違うのだっ! まさか、アレはイソジンではなかったのか!? そんなことを疑い始めている自分がいた。いや、いつもデリヘルでうがいをしているアレは、イソジンのはずだ。イソジンであるべきなのだ。もしイソジンでなかったとしたら、「ファーストキスの味はイソジンでした」と思ってきたこれまでの私の人生が救われないではないか!
あまりのショックさをツイッター上で嘆き、新宿の元デリヘル嬢に「風俗の味がするイソジンを教えてください」と頼んだ。提示されたのは「ファンガーグル」であった。もう一度言おう。「ファンガーグル」である。「ファンガーグル」とは一体何なのか。風俗に行ってうがいをする際に「じゃあイソジンでうがいしよっか♡」という風俗嬢は数多いるが、「じゃあファンガーグルでうがいしよっか♡」なんて言ってくる風俗嬢は、これまで1人もいなかった。ちなみに、このまえ池袋の某素人系のデリヘルを利用したら「じゃあイソジンでうがいしよっか♡」と言いながら、原液だけをコップに入れたものを渡してきたデリヘル嬢に出会った。もちろん、これはデリヘル嬢による私への嫌がらせでも何でもない。なぜならば、そのデリヘル嬢本人も、正々堂々と原液だけでうがいをしていたからである。私はM性感に行って「あんたの性感帯ここでしょ!」と女王様に言われると、別に性感帯でなくても「そ、そこ性感帯でひゅ~!」と、思わず言ってしまうタイプの人間なので、もちろんここでも私はデリヘル嬢には何も口を出さず、渡された原液だけでうがいをした。そんな風に、原液だけでうがいをし始める一風変わった風俗嬢だっているのに、「じゃあファンガーグルでうがいしよっか♡」なんて言ってくる風俗嬢は、これまで1人もいなかったのである。
仕方がないので、「ファンガーグル」をネットで検索して購入してみた。250ml500円である。
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「ファンガーグル」のことを調べていく過程でわかったのだが、どうやら私たちが「イソジン」と呼んでいるのは、『ガーグル』という大きなカテゴリーの中の「イソジンガーグル」のことを指しているらしく、その他にも、「ファンガーグル」や「ガーグルプロ」、「モナミクリンガーグル」、「コサジンガーグル」など、多くのガーグルが存在しているようだ。そして、これらは「ポビドンヨード」という医薬品が含まれているかいないかで大きく分けることができるのだ。
ポビドンヨードとは、殺菌作用のある医薬品で、イソジンが黒褐色で、独特なヨウ素の味や匂いを発しているのも、このポビドンヨードが含まれているからなのである。
ここで、一つの疑問が生まれる。「ファンガーグル」のような業務用のうがい薬は、この医薬品であるポビドンヨードが入っていない分、低価格でコストを下げられるので風俗店で重宝されているのであるが、ポビドンヨードが含まれていないにも関わらず、どうして「ファンガーグル」のようなうがい薬もイソジンのような黒褐色をしているのであろうか? 私はその理由を、業務用うがい薬を販売しているサイトで見つけてしまった。
画面中央、赤字で表記されている文字に注目してほしい。「液体色はおなじみの色ですのでスムーズにご利用頂けます」と書かれているのである。イソジンの黒褐色に合わせて黒い色で作ってあるから、イソジンからの乗り換えもスムーズですよ、ということだ。これは一体何の成分で色付けがされているのか調べたところ、答えはカラメルであった。要は、言ってしまえばイソジンに見えるように嘘をついているのだ! 風俗で使われている業務用うがい薬の黒く濁った色は何の色かと問うならば、それは嘘の色なのである!
しかし、ここで注意して頂きたいのは、私は「ファンガーグル」をはじめとするポビドンヨードの含まれていないうがい薬を使っているお店を糾弾したいわけではない。別にイソジンが性病予防に効果があるという医学的エビデンスがあるわけではないし、1日に何度もうがいをする風俗嬢側からしたら、殺菌作用の強いイソジンを使い続けた方が口の中の粘膜が弱ってかえって菌を繁殖させてしまう可能性だってあるので、「ファンガーグル」のような業務用うがい薬を使用している方が合理的な面もある。だから、ここでは風俗店でうがい薬はどれを使うべきかの正義の話をしたいのではない。私が訴えたいのは、自分がイソジンだと信じていたものが実はイソジンではなかったと知ってしまったことによって、「ファーストキスの味はイソジンだった」と思いこんできた、これまでの私のイノセントな心が傷ついてしまったということなのである! イソジンではないものが、〝イソジン〟と呼ばれ続けていること。ただそのことだけが問題なのである。私たち人間は、こんな小さなことで心のイノセントさを簡単に失いうる生き物だ。そして同時に、私たち人間は、失われてしまった心のイノセントさを取り戻す試みに取り掛かる力も常に持ち合わせている。
というわけで、私は心のイノセントさを取り戻すために「ファンガーグル」を購入したのだ。Amazonから「ファンガーグル」が届いた日に、まずは自室で1うがいをしてみた。私の口の中は、デリヘルに満ち満ちた。やっと出会えた。新宿の元風俗嬢が言っていたように、多くのデリヘルで使われているうがい薬は、ポビドンヨードの含まれていない「ファンガーグル」のような味をしているのだ。
私はこの日の翌日、小さな容器に「ファンガーグル」と、それから少しの幸せを詰めて、会社へ持って行った。ちなみに、うがい薬を会社に持っていく際に、どの容器に入れて持っていけばよいのかという問題が生じるが、私はワンタッチキャップの小さくてシンプルな容器に入れていくことをお勧めする。
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デリヘルでは、上のようなワンタッチキャップのものに加えて、ネジキャップ式のものや、キャップ付ディスペンサー型のものがよく使われているが、これらは池袋の『キッチンABC』のような飲食店に入った時に、サラダ用のドレッシングとして同じ容器が使われている可能性が非常に高いため、避けた方がベターなのである。
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ファンガーグルを片手に10:00に出社した私は、10時20分にはトイレに向かっていた。出社した直後はトイレを使っている人がよくいるものだが、20分も経てばトイレの利用者は減り、舞台が整うのである。まずトイレに入った私は、手持ちのファンガーグルで1度うがいをした。人間の習慣とは不思議なもので、ファンファーグルでうがいをしたところ、勃起もした。ファンガーグルでうがいをする時はデリヘルで女の子と裸でシャワーを浴びている時なので常に勃起しているのであるが、「ファンガーグルでうがいをする時は常に勃起をしている」という記憶から、「ファンガーグルでうがいをすれば勃起をする」と、脳が勝手に因果関係を見出した瞬間だった。うがいの後は、そのままトイレの個室へと移動し、ズボンとパンツを脱ぎ、ウォシュレットをお尻に浴び「あんっ、ああぁんっ、んっ、あんっ」。ウォシュレットプレイが終わったところでパンツとズボンを着直し、再び手洗い場へと向かう。そこで再びファンガーグルでプレイ終わりのうがいをし、私はトイレを出てオフィスへと戻った。
結論から言ってしまえば、当初から期待していたような〝ほぼデリヘル〟はそこにはなかった。それどころか、そこにあったのは〝もはやデリヘル〟であったのだ。
ここで一度、デリヘルでの自分の動きを振りかってみよう。
ラブホの部屋にいる
→ ①服を脱いで浴室に入る
→ ②シャワーを浴びてイソジンでうがいをする
→ ③浴室を出る
→ ④プレイをする
→ ⑤プレイ後に再び浴室に入る
→ ⑥シャワーを浴びてイソジンでうがいをする
→ ⑦浴室を出る
次に、オフィスのトイレでの自分の動きを振りかってみよう。
オフィスにいる
→ ①トイレに入る
→ ②ファンガーグルでうがいをする
→ ③トイレの個室に入る
→ ④ウォシュレットでアナルを責められる
→ ⑤個室を出る
→ ⑥ファンガーグルでうがいをする
→ ⑦トイレを出る
この2つの動きの中で、①空間移動のタイミングを青色に、②うがいのタイミングを緑色に、③プレイのタイミングを赤色にしたものが以下である。
ラブホの部屋にいる
→ ①服を脱いで浴室に入る
→ ②シャワーを浴びてイソジンでうがいをする
→ ③浴室を出る
→ ④プレイをする
→ ⑤プレイ後に再び浴室に入る
→ ⑥シャワーを浴びてイソジンでうがいをする
→ ⑦浴室を出る
オフィスにいる
→ ①トイレに入る
→ ②ファンガーグルでうがいをする
→ ③トイレの個室に入る
→ ④ウォシュレットでアナルを責められる
→ ⑤個室を出る
→ ⑥ファンガーグルでうがいをする
→ ⑦トイレを出る
お気づき頂けただろうか。デリヘルでうがいをする時と、オフィスのトイレでうがいをする時では、①空間移動のタイミング、②うがいのタイミング、③プレイのタイミングが全く同じなのである! この両シチュエーションにおける人間の動きの同型性こそが、オフィスのトイレにおけるうがいという振る舞いを〝ほぼデリヘル〟どころか〝もはやデリヘル〟に思わせるのだ。
私は今年の6月頃から、生きる気力の湧かない時には、この〝もはやデリヘル〟の儀式をオフィスでよく行うようになっている。これで私の〝もはやデリヘル〟人生も安泰だ、と思っていた矢先、イソジン業界に転機が起こった。
2018年8月1日、ムンディファーマ株式会社・シオノギヘルスケア株式会社が『透明なイソジン』という商品を発表したのである。これまでのイソジンの黒褐色やヨウ素の臭いの元だった医薬品であるポビドンヨードを成分にすることをやめ、色が透明で、アップルやミントの味のするイソジンが開発されたのである。
天下のイソジンが透明になってしまったのならば、〝イソジンが黒褐色に濁っているから〟という理由だけで同じ色に染められていた「ファンガーグル」のような業務用うがい薬たちはどうなってしまうのだろう。おそらく、イソジンの透明化が浸透してくるのと同時に、業務用うがい薬も徐々に透明になってゆき、「ファンガーグル」のようなうがい薬は、従来のイソジンと共にその姿を消して透明になってゆくのだろう。新しく開発された透明なイソジンは、業務用うがい薬の嘘の色までをも、透明にしてしまうのである。
「俺らが若い頃はなぁ、黒くて薬品の匂いのするうがい薬でうがいしてたんだぞっ!今の子たちは恵まれてるわ!今度、熟女風俗嬢に聞いてみろ!」
そんな風に、ノスタルジーに浸りながら風俗嬢に説教をするクソ客になる日もそう遠くはないのかもしれない。
イソジンの透明化、それに付随する業務用うがい薬の透明化という歴史の動きは、もはや止めることができないだろう。こうした歴史の流れという大きな動きに対して、私たち小さな人間のできることは、それを止めるのでもなく、反逆するのでもなく、これまで自分たちが、あの黒くて臭みのあるイソジンに染み込ませてきた記憶を、同時代人として共有し、そのまま死んでゆくことくらいしかないのである。
ということで、26歳素人童貞は、黒褐色で、あの独特なヨウ素の臭いが仄かに香るお酒を開発した。ジン・トニックに、とある飲料水を少し加えることで、後味が仄かにイソジンの香りのするイソジン・トニックが出来上がったのだ。お酒が飲めない人のことも考え、ジンジャーエールに、とある飲料水を少し加えることで、後味が仄かにイソジンの香りのするイソジンジャーエールも開発した。
11月18日(日)19時~、新宿ロフトプラスワンで著書『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』の出版記念トークイベントを開催するにあたり、イソジン・トニックと、イソジンジャーエールをオリジナルドリンクメニューとして提供することにした。このイソジンの危機の時代に、是非、皆さんがイソジンに染み込ませてきた記憶と共に、乾杯をしましょう。
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