プロフィール

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26歳素人童貞 a.k.a 素童

T179 B92(A) W73 H89

血液型B
出身地栃木
性格つらい
好きな食べ物カレー
好きな飲み物イソジン
マイブーム逆指名カードを貰いに行くこと
ファーストキスの味は?イソジン
初体験のシチュエーション小山セクシービーム
チャームポイントやくみつる似の顔
店長からのコメント
2018/11/10(土) 風俗エッセイ
『昼休み、またピンクサロンに走り出していた』が発売されました。全然売れないです。
店長からのコメント
完全業界外未経験の正真正銘の素人童貞です。
『日暮里駅前クンニ塾』で100点中45点を叩き出した子です。
スケジュール
8/12(月) 8/13(火) 8/14(水) 8/15(木) 8/16(金) 8/17(土) 8/18(日)
 10:00 ~ 18:00   おっパブ   飲み会   風俗嬢が飲み会当欠したので初対面の風俗客と飲み会   10:00 ~ 18:00   読書   友達のオフ会 

ちんこを洗わなければならないのです

 私は今から、自らの整理しがたい罪について語るでしょう。誰かに聞かれたわけでもないのに、わざわざ自らの罪に関して文字に起こす必要なんてないのではないか。そういった考え方もあるでしょうが、しかしやはり私は自らの整理しがたい罪について語るのです。なぜならそれこそが、罪というものが持つ性質であるからなのであります。

 その日私は、池袋の某ラブホテルにいました。デリバリーヘルスで指名をした、とある痴女を待っていました。デリバリーヘルスとは一般的に、前日か当日に女性の予約をして、予約時間になったらラブホテルへと向かい、部屋が確保できたらお店に部屋番号を伝えるというフローで成り立っているものでありますから、ラブホテルに到着してから女性が来るまで10~15分の時間が生じることは多くの方に理解して頂けることだと思います。その10~15分の間に、私はいつもやってしまう癖があるのです。

 ちんこを、洗うのです。私には、ちんこを洗う癖が、あるのです。もちろん、それだけを聞けば女性が来る前にしっかり身体を綺麗にしておく善人に思われるかもしれませんが、私はそうした誤解を最も恐れています。まず私は、ラブホテルに来る前にお風呂に入って全身を入念に洗うのですが、それにも関わらずラブホテルに着くと、女性に会う直前までちんこを洗いたくなってしまうのです。しかもその時に洗いたい箇所は、一切偽りなく、ちんこのみなのであります。ただただちんこのみ、洗わずにはいられなくなってしまうのです。

 その日も私は、ちんこを洗いたくて洗いたくて仕方がなくなってしまっていました。それはこの日に呼んだ女性が痴女系の女性であったことも理由の一つかもしれない、ということは思考する価値のあることであります。私はお店にホテルの部屋番号を伝えてから女性が来るまでの短い間に、洗面器の前で腰を屈めながらちんこを洗い始めました。もしかしたら、なぜ浴室ではなく洗面器でちんこを洗うんだと疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。それは、私は女性が来る前に浴室を使いたくないからであります。「先にシャワー浴びといたから、シャワーはいいや」と言ってきそうなシャワーを浴びたがらない客だと女性に思われてしまうのは恐ろしいことでありますし、もし私が先にシャワーでちんこを洗ったことによって少しだけ浴室の床が濡れていることに気づいた女性に「え?なんで濡れてんの?」と言われたとして、「あっ、ちんこだけ先に洗ってたんすよ」と、気まずい空気にならないよう爽やかに気持ちを伝えるコミュニケーション術というものも私は持ち合わせていないのです。だから私はいつも洗面器でちんこを洗い、普通であれば使わないホテルの小さなタオルで洗面器を拭き上げて完全犯罪を目論むのです。

 こんな理由を並べたところで、やはり洗面器でちんこを洗う人間に対する嫌悪感を持たれた方は性別を問わず多く存在するのではないかと思います。それは、ちんこの話からくる嫌悪感というよりかは、普通であればちんこを洗う場所ではないところでちんこを洗っているという、ある種の〝場違い感〟に対する嫌悪感であると思われます。そうした場違い感に対する嫌悪感というものは、私がいくら丁寧に洗面器をタオルで拭いたところで、決して拭えないものだということは重々承知しております。そしてそれはまた、私が私のちんこに対して抱いている嫌悪感と、同型の構造を持っていることも事実です。私はいくら自分のちんこを洗ったところで、自分のちんこが綺麗になったと思うことができないのです。私のちんこは、いつまでもこの世に対して場違いであり続けているのであります。それは生まれながらにして背負っている、原罪のようなものなのです。

 そんな理由から、この日も私は洗面器でちんこを洗っていたのです。まずは水で軽く流してから、目の前にあったハンドソープをちんこにつけて洗いました。私がちんこを洗っている際に常に思い浮かぶのは、ゲゲゲの鬼太郎に出てきたおぞましい姿の小豆洗いであります。どうして小豆洗いは小豆を洗い続けているのか、考えたことはあるでしょうか? 私はそんなことを考える前に「小豆洗いは私だ!」と直感的に思いました。小豆洗いは私で、私が小豆洗いで、小豆がちんこで、ちんこが小豆なのです。そう思いながら私は、ちんこを洗うのでした。

 コンッ、コンッ、コンッ。ドアの方からノックの音が響いたので、私はちょうど洗い終わったちんこをパンツの中にしまい、ズボンのベルトを締め、小さなタオルで洗面器の周りを拭いてからドアの方へと向かいました。ドアを開けるとそこには、元アイドルで現役タレントをしている芸能人のような、どこか幼さを残した私より10個ほど年上の、茶髪のポニーテールのお姉さんが立っていました。

「はじめまして、今日はご指名ありがとうございます」

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」

薄い唇の口角をあげながら、目尻に皺を寄せた笑顔で挨拶をしてくれた彼女を部屋に迎え入れ、私はソファの上に座りました。すると彼女はすかさず私のパーソナルスペースに大人の香りと共にスルッと入りこんできて、上半身を撫でるようにフェザータッチしながら、私のYシャツのボタンを外していきました。それからベルトを外され、ズボンを脱がされ、勃起して盛り上がったグレーのパンツを顕にさせられました。

「やだぁっ、もう濡れちゃってるじゃないの」

そう言いながら彼女は、華奢な色白の指で盛り上がったパンツの頂点をツンッと触りました。もしかしたら本当に我慢汁が出てしまっていたのかもしれませんが、しかしそれは十中八九、洗面器でちんこを洗った時に付着した水滴がパンツを濡らしていたのです。

「す、すいません、興奮してしまって。。。」

私はすかさず、彼女の話に合わせました。

「も~う、仕方ないんだから。脱がせちゃうね」

そう言いながら彼女は、私のグレーのパンツを脱がし、綺麗に四つ折りに畳んでガラステーブルの上に置きました。それから彼女は私の真下にしゃがみ込むと何の前触れもなしに、私の顕わになったちんこを自らの鼻の上にポンッと軽やかに乗せたのでした。「あっ、汚いのに...」私は思わず息を殺しながらそう呟きました。しかしそれは、まだ一緒にシャワーに入っていないのに私のちんこを急に鼻に乗せはじめた彼女のことを心配して出た言葉ではありませんでした。シャワーに入る前からちんこに触れる風俗嬢は、脱衣時にしっかりとちんこが汚いかどうか見極めた上でそれをやっている、そういったことを語る女性を今まで何人も見てきましたので、彼女もまたそれくらいの聡明さを持った上で突然にちんこを鼻の上に乗せたのだと私は思いました。それでも私が「あっ、汚いのに...」と口にしてしまったのは、やはりいくら洗っても拭うことのできない自らのちんこに対する嫌悪感に由来するものでありました。

「あ~、エッチな臭いがす.....、、、えっ?」

ちんこを鼻に乗せた彼女の眉間に一瞬で皺が寄り、あからさまに怪訝そうな表情に移り変わりました。彼女が「エッチな臭いが」と言い出した時の「エッ」は『ファ』の音だったのに、最後の「えっ?」は『レ』の音であったのですが、それが彼女が何かに気づいたことの何よりの証拠に思われました。それから彼女は小さくて白い鼻の外壁をヒクヒクと座礁させながら、私のちんこの先っぽの匂いを改めて意識的に嗅ぎ始めました。

「ねぇ、なんか、ハンドソープ?」

「えっ..??」

彼女の口から出てきた「ハンドソープ」というワードに私は戸惑ってしまい、「えっ」という言葉を中途半端に『ミ』の音で投げ返してしまいました。

「どうして、わかるんですか?」

私はもはや自分を隠したい気持ちよりも、彼女がハンドソープの匂いを見つけたことに対する驚きの気持ちの方が勝り、素直な疑問を言葉にしてしまいました。

「うん、だって私、よくこのホテルでプレイ後に手洗うもん。その時と全く同じ匂いがする」

彼女は相変わらず鼻の外壁をヒクヒクとさせながらそう言いました。

「あっ、そ、そうなんですねぇ」

「もしかして、ハンドソープで洗ったの?」

「は、はい...。すいません。。。」

「ふ~ん」

そう言いながら彼女が、今日会ってから一番の悪戯な表情を浮かべました。

「どうして洗ったの?」

「き、汚いと思ったからです」

「へぇ~。ねぇ、見てて」

彼女はちんこの先っぽのちょうど真上の位置に自分の頭を持っていき、一瞬だけ私の顔を眼差すと、今度はちんこを見下ろすように睫毛を伏せて「ペッ!!!」と、私の亀頭に唾を吐き捨てました。そしてその吐き捨てた唾液を塗り付けるかのように、ゆっくりと手コキをし始めました。

「ほ~ら、ちんこ。こんな汚くなっちゃったよ」

「は...はい。。。」

唾を吐き捨てた彼女とは裏腹に、私はもうただただ唾を飲み込むことしかできなくなってしまいました。

「こんな汚くなっちゃったんだから、洗わないと。ねぇ?」

そう言いながら彼女は颯爽と立ち上がり、唾液まみれになった私のちんこを強い力で引っ張りながら、ホテルの中を歩み始めました。もうこうなっては彼女の言いなりになるしかないと思い、引っ張られるがままに連れていかれると、少し歩いたところで彼女が足を止めました。横を見ると、鏡に映った裸の私がいました。私の立たされた場所は、洗面器の前でありました。

 

 

 

騎乗位素股と教育学者の思想

 ホテルのインターフォンが鳴った。ドアを開けた。こちらを睨んでいる、女の子が立っていた。その表情は同時に、睨みたくないのに睨んでしまっているという、やりきれない感じも伝えていた。黒髪ショートヘアで、瞳が大きく、化粧っ気のなさがどこか田舎臭さを感じさせる、いかにも池袋の風俗客が好きそうな雰囲気の女の子だった。彼女は『業界未経験』とホームページで謳われていた。

 池袋には、女の子の素人っぽさを売りにする風俗店が幅を利かせている。素人店のメッカと言ってもいいだろう。業界未経験ではないのに『業界未経験』と紹介されている女の子なんていくらでもいる。2年ほど前に池袋の『未経験』というお店で業界未経験の女の子を指名した際には、「『未経験』で働いて3年目になります」という業界未経験の女の子が来たことだってあった。もはや「業界未経験」というワードは、セブンイレブンの「新発売」ほどの意味しかもたなくなっている。また別の池袋の素人店では、女の子のプロフィール欄にある女の子の紹介動画をクリックしたところ、〝高収入求人ガールズヘブン〟と描かれたピンクの紙で顔を半分隠しながら、「もちろん、完全自由出勤なので、ドタキャンも大丈夫ですっ!」と、カメラに向かって笑顔で語りかける女の子の姿が再生された。どう見ても女性求人向けの動画なのだが、なぜか平然と、客が見るプロフィールページにその動画が埋め込まれていた。素人の素人による素人のための素人店。池袋という磁場が生み出したノヴェルである。

 池袋はそんな街なもんだから、ホテルで女の子と会えば「私、業界未経験なんです」「そうなんだ」「はいっ、緊張してます!うふふ」なんて会話が繰り広げられるのはザラである。しかし、この日に現れた女の子は、そういった類の子ではなかった。ドアを開けた瞬間、口は文字通り「ヘ」の字に曲がっていて、目は絵に描いたような下三白眼になっており、真ん丸な黒眼はまっすぐにこちらを見つめていて、硬直した腕と脚を使って身体を引っ張るように、過剰に一直線に部屋に上がりこんできた。それから、私が座るか気にする様子もなく、彼女は独りでソファに座った。

「大丈夫? なんか、すごい緊張してない?」

私は自分の不安を抑えるために、彼女に声をかけた。彼女の緊張は、こちらを不安にさせるほどのものだった。

「はいっ!昨日入店させて頂いたばかりでございまして、まだどうすればいいかわかんない」

その返事を聞いて、余計に不安になった。たった40字足らずの言葉の中に、元気な返事、謙譲語と丁寧語、それからタメ口が混じり合っていた。文法ですら、彼女の緊張を抑えることに失敗したのだ。

「お酒は飲まれますか?」

突然、お酒の話をされた。わけがわからなかった。

「んー、1人では飲まないけど、他人といる時は飲むかな。お酒飲むの?」そう返事をしながら、私もソファに腰かけた。

「うん、この前、お父さんに飲まされて、初めて凄く酔ったの。自分の限界を知れたのが初めてだったから、よかった。自分の限界を知らないと、怖いじゃないですか?」

「そうだね、怖いね。お父さんと飲むってことは、仲良いんだね」

「うん。うちのお父さん、定年後の生活に向けてね、プラモデルをいっぱい買ってるの。本棚の上にいーっぱいプラモデルが積み上げられてて...」

そう言いながら彼女は私の手を取り、自らの胸のところにその手を運んだ。服の上から触れただけでもEカップはあるということがわかるくらいの、大きいおっぱいだった。

「名前はTっていいます。今日はよろしくお願いします」

いつの間にか、彼女は人が植物に話しかけるように、ゆったりと優しい口調になっていた。お酒とお父さんの話には、きっとわけがあったのだ。

「『T』って、なんか苗字でもありそうだし、下の名前でもありそうだよね。なんでTって源氏名にしたの?」

彼女に問いかけながら私は、彼女の源氏名と同じ『T』という苗字の教育学者のことを思い出していた。

 

 

大学3年生の初秋だった。鍵もなく、無法地帯と化した研究室でゼミ生の2人と雑談をしていると、ゼミの担当教授が入ってきた。「あと2時間くらいで〇〇大学のT教授がゲストの講演会が始まるんだけど、資料配布する係がいないから手伝ってよ。バイト代も出せるし」その時にゼミ室にいた3人の中で空き時間があるのは自分だけだったので、手伝うことになった。

 研究室に置いてあった大量の資料を持ってすぐに講演会が開かれる大教室へと移動し、会場の準備をした。1時間ほどすると徐々に講演会を聞きに来た大学教授や大学生、それから現役の教師の人たちが集まり始めた。それからしばらくしてT教授が訪れ、時間になったところで講演会が始まった。講演中は特に仕事がなかった私は、一番後ろの席でT教授の話を聞くことにした。

 T教授は業界内外を問わず有名な人で、同業者や現役の教師からカリスマ的な支持を集めている人物だった。この日も『学びの創造法』というテーマで、まるで説法のような講演をしていた。論文のような抽象的な理論を語ったかと思えば、その具体例として学校で子供と接した時のミクロな体験を語る。歴史の話をしたかと思えば、同じ枠組みで現代社会について語り、未来を予測する。小さい話と、大きい話、過去と現在と未来を縦横無尽に往復しながら語る、カリスマの話し方だった。 

 一通りの話が終わって質問タイムになった時、その講演を聴いていた、四角い黒ぶち眼鏡をした男子学生が挙手をした。まだ中身も整理できておらず、しどろもどろで、切実さの感じられる声色だった。

『私は教師になろうと思っているのですが、大学で教育とは何かを考えはじめてから、教育とは何かがよくわからなくなり、自信がなくなってきました。最近では自殺をする児童の話を聞きます。先生は、たとえば自分が教育で携わった子どもが自殺したらどう思われますか? 先生はもう教育に携わってから何十年も経過しておられるので、自らの教育実践の中で関わってきた子供たちが大人になってどう育っていったのかに関しても観察しておられると思うのですが。例えば、もし自分の教え子が将来に死んでしまっていたとしたら、それまでした教育は意味がなかったのだと、失敗だったのだと思われるでしょうか?』

その質問を受けると、T教授は切実な顔で、それでもどこか手慣れたような表情で、手に持ったマイクを口に近づけた。

『うーん。まず、僕が教育に携わった子が大人になって連絡をくれるってことはよくあることだけど、まぁそういう人たちは、本人が僕からいい影響を受けたと思ってくれてる人たちばかりだから、それだけで判断することはできないよね。僕のこと憎んでたら、まず連絡なんてしてこないわけだし (笑) それに僕はね、教育というものを将来の結果から評価する考え方に疑問を持っている。教育ってのは、その時その時の、一回性の経験のことで、その時の学びのためにあるものだと思ってる。自分が教育実践をしていて、今日はいい学びが生まれたな、子供のいい顔が見れたな、自分が良い学びを得たな、そう感じた時、そういった経験が教育なんだと思っている。もっと言えばね、子どもと接してると、子どもたちが、こっちが意図したとは全く関係ないところで学びを得ていることすらある。それは教育的に失敗だったかと言うと、そうではない。逆に言えば、僕が「良い教育ができたな」って思えた時、それが子どもにとっては何の学びにもなっていないことだってあると思う。もしかしたら悪い影響すら与えているかもしれない。僕はそういったものも全て含めて、教育だと思ってる。もしかしたら君の言うように、関わった子どもが、将来に自殺をしてしまうかもしれない。でも正直言うと根本のところでは、子供の将来なんてどうなるかはわからない。だって子供だって、自分とは違う他者なんだから。それでも、 子どもの将来とは無関係なところに、その時々にその場所に、教育的経験っていうのは存在してるんだと思ってるんだよね』

質問をした男子学生は、そのT教授の返答にどこか納得をしていない様子だった。私は、さっきまで真剣な顔で講演をしていたT教授が、男子学生の質問に応える際に、まるで蝋燭でも垂らされ始めたマゾヒストのような笑顔を時おり見せるところに、言葉にならない衝動を覚えていた。

 

 

「なんでTって源氏名にしたの?」

「Tっていうのはね、小学生の頃に、転校しちゃった子の名前なの。すごくかわいい子だった。なんか私ね、子供のころ仲良かった子がみんな転校していっちゃったの」

「へぇ~、そんなことあるんだね」

「うん、本当に可愛かった。今ならSNSとかあるからそんな悲しいことじゃないかもしれないけど、子供の頃って友達が転校するってなると、もうお別れってことになっちゃうじゃん?みんな転校していっちゃうから、友達がいなくなっちゃって」

立て続けに自分の仲の良かった友達が転校してしまう。そういった偶然もあるだろう。しかしこの女の子の場合は順番が逆で、転校してしまった子のことを、転校してしまったが故に止まらないほど好きになったのではないか。ドアを開けた瞬間の彼女のこちらを睨んでいた表情や、手足を硬直させたまま一直線に歩き始めた光景を思い出すと、そのように解釈する方が似合っていると思ったし、私は相変わらず服の上から彼女の胸を揉んでいた。

「すごい胸あったかいね。代謝いいの?」

「えー、代謝なんて自分じゃわかんないよ。シャワー浴びます?」

「シャワー浴びよっか」

それからシャワーを浴びて、ベッドに入った。会ったばかりの時の緊張は、ほとんどなくなっているように見えた。彼女のプレイは、面白かった。キスをすると、真ん丸だった目の上瞼の部分だけが水平になって三白眼が消え、狭くなった瞼の中の黒目はこちらの唇だけを見つめ、一直線に獲物を捕らえるかのようにキスをしてきた。彼女の胸をこちらが触れば、もっと胸を強く揉めと言わんばかりに、胸を揉んでいる私の手を上から強く揉んできた。彼女の中に指を入れても、もっと強く動かせと言わんばかりに、私の手を強く握って自ら奥に押し込んだ。でも、なんだかどこか動きは不器用で、身体の動きはてんでばらばらで、ただそういう時でも目だけはこちらのことをよく見つめていた。たぶん、本当に風俗未経験で、自分の限界を知らないからこその勢いなのではないかと思った。「自分の限界を知らないと、怖いじゃないですか?」先の彼女の言葉が想起されたが、私は彼女のお父さんほどの人でもないので、彼女の限界を知らしめるために限界を超えさせるような責任も度胸もなかった。

 早々に彼女のことを責めるのを切り上げて、今度は彼女に動いてもらった。フェラチオをしてもらうと、その流れのままで彼女が私の身体の上に乗った。騎乗位素股だ。まるでイスに深く腰を下ろすように、どっしりと彼女は私の上に乗った。体重をかけすぎていて座り方がよくなく、それに彼女は少しだけ体重が重かった。そのまま男性器を手に持ったまま、彼女は腰を振った。下腹部に苦しさを覚えながらも、同時に気持ち良さも感じた。3分ほど素股を続けていると、左腕を中心に、左上半身に微量な電流が流れているかのようなピリピリした感覚を覚え、自分が少し痛みを感じていることに気づきはじめた。おそらく、彼女が下腹部を圧迫しているせいで、上半身にうまく血液が回っていなかったのだ。なるべく早くイッて終わらせよう。そう思って、自分の気持ちを高ぶらせるために喘ぎ声を出そうと口を開いた。

「うぇっ、うぇぇぇぇっ」

「あ」の形で大きく口を開こうとしたのにうまく口を動かすことができなかった。「う」と「え」の間の奇妙な形で、口は完全に麻痺してしまっていた。

「うぇっ、うぇぇぇぇっ!!!」

それでもこちらが喘ぎ声を出していたからか、彼女も盛り上げるために私の左腕を手にとって、自らの胸に強く押し当てはじめた。左腕を持ち上げられた瞬間、ビリビリビリッと左腕から左上半身に強い電流が走った。上にあげた自分の左手の指を見ると、人差し指が親指の方に寄って完全にくっついていて、他の3本の指も第2関節と第1関節が少し折り曲がったままで動かせなくなっていた。固まった指先で彼女の胸をうまく揉むことができず、折り曲がった指をなんとか彼女の胸に押し当てた。

「うぇっ、うぇぇぇぇっ」

「いひひひっ、ひひひっ」

異常な感じ方を見せる私に彼女はなぜか喜んでいて、子供が新しいおもちゃを見つけたかのような陰湿で楽しそうな引き笑いをしながら、さらに激しく男性器を擦り始めた。

「うぇっ!うぇっ!」

「ひひひっ」

彼女の顔を見ていたら、どんどん上瞼と下瞼がくっつきはじめて戻せなくなっていくのを感じた。麻痺は口元から目元にまで及び、十分に目を開くことすら困難になってきた。視界は薄目の時のように狭くなり、近づいた上の瞼と下の瞼の間には、どうしようもなく涙が浮かびはじめた。どうやら彼女もびっしょりと汗をかいているようで、ショートヘアの毛先がくるんっと曲線を描き始めている彼女の笑顔が、涙の中にぼやけて映った。

「ひひひひひっ」

「うぇっ!」

「ひひひひひひひっ」

「うぇぇぇぇっっっ!」

「ひひひひひひひひひひっ」

「うぇっ!うぇぇぇっ!うぇぇぇぇっっっええええええっ!」

身体全身に電流が流れたように、ブルブルと全身を震わせながら射精した。男性器だけが気持ち良く、それ以外の全ての部分は無数の小さな針で刺されたかのように痛かった。射精をすると、彼女がやっと私の身体の上から降りた。そのままティッシュ箱に手を伸ばし、男性器の周りを拭いてくれた。下半身から温かい血が身体の上の方にゆっくりと流れてくるのを内側から感じた。血が流れ込んできたところから順番に、ジワーッとした、柔らかで持続性のある優しい痛みが広がってきた。じっとしながら痛みに耐えていると、毛先がバラバラになった彼女が私の顔を真上から覗き込んできた。

「気持ち良かった?」

「けもてよせげて、もぇ、うげけねうぃ」

私の身体の痛みはまったく伝わってないようで、汗をかいた彼女の笑顔は晴れ晴れとしていて美しかった。まだ身体は動かせる気にならなかったが、少しずつ、口が動くようになってきた。

「すげい、責めでってね」

「うん、お兄さん、凄く気持ちよさそうだったから」

「せう? でも君も、すげい本当はSねんじゃねいの?」

「そんなことないよ、いつも責められるだけだもん」

「せうねの?」

「うん、お兄さんのこと責めるの、なんか凄い楽しかった」

 

あの時に聞いたT教授の、教育思想の一端に触れたような瞬間だった。

 

 

 

 

子規庵と 日暮里駅前 クンニ塾

 先月のとある土曜日。鶯谷に足を運んだ。俳人正岡子規が晩年を過ごした「子規庵」にて、相互フォロワーの方がトークイベントをするということだった。

 JR鶯谷駅で電車を降りて北口に出るとすぐ、だれかと待ち合わせをしているであろう40~50代のおじさんが何人か目に入った。中には、ふくよかで熟した女性と合流している最中の者もいた。鶯谷だからおそらく、待ち合わせ型のデリヘルであると思った。

 子規庵に向かって歩を進めると、民家があり、ラブホテルがあった。2つは切り離されることなく、すぐ近くに当たり前のように同居していた。鶯谷はよく『性と俗が入り混じっている』なんて形容される街だ。しかし『性と俗が入り混じっている』なんて言ってしまうのは、そういったものが既に切り離されてしまった人の考え方であって、そもそも鶯谷は最初から性と俗の別すらないのだろう。神が『光あれ』と、光と闇とを分けられた以前の位相に、鶯谷は佇んでいる。そんなことを思いながら高架下の道を歩いていると、コンクリートの壁に貼られたポスターが目に入った。

 

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鶯谷は、性と俗が切り離されていないどころではなかった。トイレと非トイレの区別すらなかった。あらゆるところがトイレ。それが鶯谷という街だった

 トイレの中を歩きながら子規庵へ向かうと、まだまだラブホテル街が続いた。1人で歩いている、ふくよかで熟した女性とすれ違うことが多かった。鶯谷駅の北口前で、あるいは、ラブホテル街で、ふくよかで熟した女性とすれ違うことが多かったのは、なにも偶然ではなかったと思う。

 シティヘブンに登録されている東京都の風俗嬢のプロフィールの数字を地域別に算出してみると、鶯谷の風俗嬢の平均年齢は27歳と、都内平均の24歳よりも3歳高かった。それから、平均バストサイズは89cm、平均ヒップサイズは87cmで、バストもヒップも都内でナンバーワンのサイズだ。鶯谷山手線で最も乗降者数が少ない駅であるのはもう有名な話だが、都内で最も風俗嬢のおっぱいとお尻が大きい街だという事実には、もっと光が当てられるべきだと思う。

 

 子規庵に到着してから、約1時間半のトークイベントを楽しんだ。若手作家7人による表現にまつわるトークイベントだった。正岡子規が晩年に寝ながら過ごした病室兼書斎の『子規終焉の間』という、決して広くはない和室でイベントは行われた。和室のすぐ隣には、緑豊かな小さな庭が広がっていた。病に伏した正岡子規が「小園は余が天地にして、草花は唯一の詩料となりぬ」と記した庭だった。その庭が庭としてどれほど魅力的なものかは門外漢の私にはわからなかったが、正岡子規が実際に寝ていたその場所から眺めてみると、庭という舞台で生成する無限の時と出来事を、正岡子規は確かに眺めていたのだということを想像することができたし、それは原理的には誰に対しても開かれているものだということも感じさせられた。

 トークイベントは19時半で終わる予定だったが、登壇者への質問が盛り上がり、少し時間がおしていた。私は20時から『日暮里駅前クンニ塾』の予約をしていたので、焦っていた。19時40分過ぎに終わり、子規庵を急いで飛び出して『日暮里駅前クンニ塾』へ向かって走った。『日暮里駅前クンニ塾』というのは、クンニを教えてくれる先生にクンニをすると、最後に100点満点でクンニの採点をしてくれる心温まるシステムの風俗店だ。こんな話をすると「クンニを採点されると言っても、風俗だから結局演技されるだけじゃん!」「お金払ってる時点で上手くならないと思うよ」「講師も仕事なんだから、リピートに繋がるように点数低めに設定するよね」なんてことを訳知り顔で言い始める魂のレベルの低い人間が湧きあがってくるが、そういう時こそ私たちは正岡子規の俳句に学ぶべきなのだと思う。

 

山吹も 菜の花も咲く 小庭哉 (やまぶきも なのはなもさく こにはかな)


 私は大学時代に文学部で俳句の研究をしていたなんて経歴は全くなく、ただただ奨学金でピンサロにばかり通っていたので、そうした専門的な立場から先に挙げた正岡子規の俳句について論じてみようと思う。

 まず「山吹」や「菜の花」という花の話が出てきた時点で、これが女性器のメタファーだということに私たちは気づかなければならない。女性器は昔からよく花に例えられてきたし、例えば現代でも、ピンサロで女性が短い時間で入れ替わることを「花びら大回転」なんて呼ぶことを思い出してもよいだろう。

 そして次に注目すべきところは「山吹も 菜の花も」の部分で「も」という並列助詞を使用しているところだ。「山吹と 菜の花が」ではなく「山吹も 菜の花も」と表現することで、山吹と菜の花以外の花びらの可能性、つまりは、無限の女性器の存在を言外に表現している。しかしここで同様に大切なのは、ただ単純に無限の女性器の可能性を歌っているのではないということだ。なぜ無限の女性器を表現するために「山吹」「菜の花」という2つの花が選択されているのかという点も同時に考えなければならない。そこで「山吹」と「菜の花」の花言葉に注目すると、山吹の花言葉には「金」、菜の花の花言葉には「財産」という意味合いが含まれていることに気づく。特に山吹は、金貨から生まれたという逸話があるほどだ。要するに、女性器の無限の可能性を歌いながら、しかしそれは「金」や「財産」に関係しているものであるという可能性の縮減も同時に行われているのだ。

 さらに最も基礎的なことであり重要なのは「山吹」と「菜の花」が季語ということである。なんの季節かと言えばもちろん『春』だ。『春』には「色情」や「出会いや別れ」などの意味が含まれている。

 これまで出揃ったワードを整理すると『女性器』『金』『春』となる。先に挙げた俳句が、金銭を介した裸の女性との出会いと別れの無限の可能性について詠っている俳句ということがわかってきた。

 そして、最後に残ったのは「小庭哉」。これはこれまでの流れから考えると、陰毛の話でしかない。庭に生い茂る雑草のように生える陰毛。ここには正岡子規が生きた時代の限界を垣間見ることもできるだろう。レーザー脱毛で永久脱毛が可能になったのは昭和50年代。正岡子規の生きた明治時代はそんな便利な技術もなく、陰毛を処理するにしてもカミソリで剃るのが限界で、多くの女性は小庭のように陰毛が生えていたという、テクノロジー的限界が浮かび上がってくる。

 

山吹も 菜の花も咲く 小庭哉(やまぶきも なのはなもさく こにはかな)


 例えお金を介した関係であっても「所詮、お金の関係だろ」と一慨に切り捨てられるものではなく、そこには無限の女性器が、あるいは、無限の表情の女性器が存在している。そういった正岡子規的な態度でこそ、私たちは『日暮里駅前クンニ塾』の革命性に気づくことができるのではないだろうか?

 

 鶯谷から走って5分ほどで日暮里駅前に到着することができた。『日暮里駅前クンニ塾』のホームページに掲載されている近隣のホテルリストに片っ端から電話をかけ、4つめにしてやっと空いているホテルを見つけた。値段の安いボロホテルだったが、部屋に入ると、温かいオレンジ色の照明と部屋のボロさが絶妙にマッチしていて、代々木の路地裏にあるお洒落なワインバーのような雰囲気を奇跡的に醸し出している部屋だった。

 『日暮里駅前クンニ塾』に電話をしてホテルの部屋番号を伝えると、10分ほどでドアのノックが鳴った。ドアを開けると、予約をしていた先生が立っていた。黒髪ロングヘアで、艶やかな肌をした、少しぽっちゃりした30代前半くらいの女性だった。部屋に入ってベッドに隣り合わせで座り、まずは60分の料金16000円を支払った。福沢諭吉を渡すと、夏目漱石で返って来た。夏目漱石は、正岡子規の親友だった。先生は受け取ったお金を黒い鞄の中に入れると、その鞄から今度はA4の紙を一枚取り出した。女性器の絵がプリントアウトされ、各部位の名称が記載された紙だった。

 

「じゃあ、今日は、まずはこのプリントで女性器の構造について勉強してもらいます」

「はい...!」

「女性器については、よく理解していますか?」

「んー、何度も見たことはあるけど、実際にそれが知識とリンクしているかと考えると疑問が残ります...」

「そうなんだね、じゃあまず説明していくね」

 

そう言いながら先生は、プリントされた女性器の絵を赤いボールペンで指しながら説明をし始めた。

 

「ここが、大陰唇。ビラビラの大きい方だね。それで、ここが小陰唇。内側にある小さなビラビラね。今日はエッチな呼び方をしたいから、それぞれ〝大きなビラビラ〟、〝小さなビラビラ〟って呼ぶね。」

「はい...!」

「それで、ここが陰核。クリトリスって言われるところだね。その下にあるここが尿道口。それから、ここが膣口で、この中に処女膜があるの。まぁ、私はもうないんだけど(笑) 戻せたらいいんだけどぉ~!!!(笑) 」

「せ、先生っ...!」

「それで、さらに下にあるのが肛門だね。肛門はいじられるの嫌な子も多いから、いじる前はちゃんと聞くようにしないとね」

「はい...!  僕は肛門いじられるの好きなタイプですよ」

「あと、Gスポットはわかる~?」

「んー、なんとなくわかるのですが、自分がGスポットだと思っているものが本当にそうなのかは、疑問の残るところがあります」

「そうなんだ、じゃあそれも後で教えるね」

「はい...!」

「それじゃあ、まずはシャワー浴びにいこうか」

 

先生は立ち上がって服を脱ぎはじめた。私も先生に合わせて裸になった。それから2人で浴室へと移動した。まるで昭和に建てられた一軒家にありそうな、底の深い浴槽の隣でシャワーを浴びた。先に私が寝室に戻ってベッドに腰かけていると、後からバスタオルを身体に巻いた先生がやってきた。先生はそのままベッドに仰向けになった。

 

「はい。じゃあまずは、いつものようにやってみて」

 

先生はそのように言った。いつもの通り...? まず、いつもお相手しているデリヘル嬢は、ベッドで寝るときにまでバスタオルを巻いてこないんだが...!?  私は緊張からか、そんな的外れなことを考え始めてしまっていた。

 

「バ、バスタオル、取っていいですか?」

「はぁ~い」

「いやぁ~、『はい、やってみて』って言われて前戯することなんてないんで、恥ずかしいですね」

「ふふふっ、恥ずかしいよね」

 

それから私は先生の脚を開かせてクリトリスを舐めた。2年ほど前に『池袋にゃんだ☆Full☆Mix』というギャルが多く在籍しているデリヘルで、入れ墨のある黒髪ギャルにクンニした際「もっと舌優しく使って!違う違う!舌先に力が入ってる!もっと舌から力を抜いて、首を動かすようにして舐めて!」と叱咤激励を受けたことがあった。それからというもの、私はクリトリスをそのように舐めるのが常であったが、今回もそのように、私は先生のクリトリスを舐めた。「あぁっ、あぁんっ」と喘いでくださる先生。喘ぎながらもこちらを凝視しているようで、前頭葉あたりに先生の視線が刺さっていた。それから私は先生の大きなビラビラと小さなビラビラを何度か優しく舐めた。プレッシャーからか、自分の背中に汗がにじみ出てきているのがわかった。

 

「こんな感じですっ!」

 

私は照れ隠しの笑顔と高いテンションで、そう言いながら先生の方を見た。

 

「う~ん、まず、最初からクリトリス舐めるのは、良くないかな。まずは周りから焦らして舐めていって雰囲気を作るのが大事。あと、クンニの時に君は膣しか見れてない。もっと女の子の反応を見なきゃね」

 

大学生の頃に教育実習に行った際、実習先の先生から「君は授業中に下ばかり見ている」と、注意されたことを思い出した。私は子供たちに授業をしている時も、女性にクンニをしている時も、いつも下ばかり見ている。それは私の人生全体に通底する問題だった。

 

「じゃあ今度はGスポット触ってみよっか」

「はい、舌でですか!? 指でですか!?」

「指で。舌は無理でしょう(笑)」

「あっ、指入れても大丈夫なんですね」

 

これは私の下調べが甘かったが、『日暮里駅前クンニ塾』は指入れを禁止にはしていなかった。ホームページを見ると、指入れの是非はそれぞれの先生に任せているらしい。私は、ベッドの隣にローションが置いてあるのを見つけた。

 

「ローションつけましょうか!?」

「うーん、でも、彼女とやる時はローションつけないでしょ?」

 

彼女とやる時はローションつけないでしょ...? その言葉を聞いた瞬間、目の前の全ての世界が停止した。 私は、彼女に指入れをした経験がなかった。何百人もの風俗嬢に指入れをしたことがあっても、彼女にしたことは一度もなかった。それに私は、これから彼女ができたとしても、指入れをする時にローションをつける自信に満ち溢れている自分がいることにも気づいた。バファリンの半分は優しさでできていると言うが、ローションの9割は優しさでできているというのが私見だ。私は、正直に彼女に指入れをしたことがないことを伝えるべきかと迷ったが、もしそんなことをしたら「えっ、それじゃあ、あなたは何のために前戯をしているの?」という問いを突き付けられるのではないかと怖くなった。それは、私のアイデンティティを揺さぶる問いであったし、なにより「何のために前戯をしているの?」という問いは、哲学に分類される問いなのではないかと思った。一般的に、実学を教授する場においては「なぜ私たちはそれをするのか?」という原理的な問いが生じる状況になることは、雰囲気を壊してしまう可能性がある。私は、先生の善き生徒になりたかった。

 

「わかりました、ローションはつけません」

「うん、じゃあ、まずは入口付近を優しく触って濡らしてみて」

「はい...」

「もう少し広く指を動かしていいんだよ?」

「こ、こうですか...?」

 

私の指入れの要領が悪かったのだろう、先生は私の手を掴んで自ら動かし始めた。すると、先よりも遥かに先生の先生は濡れはじめ、ビチビチビチビチッ!という音が部屋中に響き渡った。

 

「すごいですね...」

「じゃあそのまま指入れてみようか、Gスポット触ってみて」

「はい...」

 

私は先生の奥深くに指を入れた。そこから第2関節で指を折って手前に引き、ザラザラとした部分を探した。『AV男優しみけんのスーパーSEX講座!』でしみけんが言っていたことをそのまま実行した。

 

「あっ」

「先生っ...! ここですか....?」

「うん、大体合ってる!あとほんの少しだけ奥に入れてみて、、、あっ....」

「ここですか....!?」

「そうそう、そこそこ。そこを中心に、指の腹で擦ってみて」

 

それから私はいつもどおり、指を静かに動かした。

 

「もう少し強く動かした方がいいよ?」

「もう少し強くても大丈夫なんですか!?」

「うん、だって、指ほとんど動いてないじゃない」

「指動かすと痛いってよく言いませんか!?」

「うーん」

 

困惑したような表情を浮かべながら、先生はまた私の手を取って激しく動かし始めた。

 

「こーんくらい強くやったら、そりゃ痛いよ。粘膜だからね」

 

それから先生は、少しだけ緩く、それでも私が思っているよりかは激しく私の手を動かした。

 

「でも、これくらいなら大丈夫」

「なるほど...」

「さっきの君のやつだと、たぶん指入ってるなぁくらいにしか思わなかったよ(笑)」

「はい...」

「だって膣はしっかり濡れてればペニスが入っても大丈夫なんだから。指一本だったらペニスより細いから、ペニスの刺激くらいには動かしても大丈夫なんだよ。君の指は、ペニスよりも全然動いてなかったよ」

「勉強になります」

 

あまりにクリティカルな先生の言葉に、私はたじたじになり、びっしょりと汗をかいていた。私の指は、ペニス以下だったのだ。

 

「じゃあ今度は下になろっか」

 

先生にそう言われ、私はベッドの上に仰向けになった。

 

「焦らすことの良さを知ってほしいから、最初は直接乳首を舐めてみて、その次に焦らして舐めてみるね」

 

そう言うと先生は、私の乳首を舐め始めた。宣言通り、最初はいきなり乳首を舐めてくださり、その次に、乳首の周囲を円を描くようにゆっくり舐めながら、徐々に乳首に舌を近づけていくように舐めてくださった。

 

「どっちの方が気持ち良かった?」

「どっちも気持ち良かったです!!!」

 

私はもう焦らすとか焦らされるとか関係なく、先ほどまで真摯に私にクンニを教えてくれた先生が私の乳首を舐めてくださっているという、そうした端的な事実に興奮していた。真剣に私に前戯を教えてくれた先生は私にとって、教師モノがコンセプトの風俗店の女性よりも、遥かに先生に思えた。これは一つのリアリティショーであり、宮沢賢治風に言うならば、彼女は私にとってほんたうの先生だった。

 それから先生はローションをつけて私の男性器を握り、手コキをし始めた。手コキには焦らしもなにもなく、ただただ即物的な上下のストロークだけがあった。それは先生が下手というわけではなく、終了時間が迫っているという環境的な要因が先生をそうさせていたのだと思った。先生にこんな即物的な手コキをさせてしまったのは、60分コースを選んでしまった自分だった。それに私は『日暮里駅前クンニ塾』が普通に抜きありのお店であることも知らず、お昼にオナニーをしてしまっていて射精ができそうになかった。私はもうその時点で、幾重にも前戯を失敗していたのだ。3分ほど手コキをしてもらったところで、タイマーが鳴った。

 

「あぁっ、あっ、気持ちいいです。気持ちいいですけど...先生、すいません。あの、私、このお店は抜きありなのかどうかよく調べてなくて、たぶん抜きが無いだろうと思って家でオナニーをしてきてしまいました。射精できそうにありません。すみません。」 

「そうなの~!? じゃあ本当に勉強だけしに来たんだね」

「はい...」

「勉強になった?」

「凄く勉強になりました」

「それなら良かった」


それから2人でシャワーを浴び、またベッドの上で隣り合わせに座った。今度は先生が鞄から評価表を取り出した。評価表はクンニを評価する10個の項目があり、それぞれにA~E評価がつけられるものだった。

 

①刺激の強弱は、痛かったりはしなかったから悪いわけではないけど、もう少し強めだったり、緩急をつけるとよかったからC:普通かなぁ」

「はい...」 

「②スピード・リズムも、さっきと同じ理由でC:普通かな」

「はい...」  

「③焦らし方の上手さは、んー、周りから舐めずに最初からクリ舐めちゃってたから、D:悪いね」 

「そうっすね、なんか焦らしたりするの恥ずかしいんですよねぇ~」

「そっちが恥ずかしがっちゃうと、こっちも恥ずかしくなっちゃうじゃぁ~ん」

「えっ...!?先生、可愛いですね!」

「もぉ~、そういうのもいいけどぉ~、やっぱ焦らしは大事だからね」

「はい...」  

④舌の柔らかさは、優しかったし良かったかな。B:良いだね」

舌の柔らかさって走るのが速いかどうかみたいなところがありそうですよね。先天的なものと言いますか...

「うん、ちょっとわかんないけど」

「はい...」

⑤気持ち良さC:普通かな。これも強弱つけてもっと良くできるからね」

「はい...」

⑥講師はイケたか、これは今日はイケなかったからD:悪いだね」

「はい......」

⑦ボディタッチは、これはC:普通かな。やっぱ膣ばっかり責めちゃってたからね。もっと太腿とかも触っても良かったよ」

「はい...」

⑧声かけや言葉責めは、これは特に人によっても好き嫌いあるから必須ってわけじゃないけど、それにしても何もなかったよね。ずっと下見ちゃってたしD:悪いだね」

「はい...。私の人生全体の問題です...」

⑨清潔感は、ヒゲもしっかり剃ってるし、爪も短いし、これは良かったね。B:良いだね」

「あざっす」

⑩女性器構造の理解は、これも良くできたと思う。B:良いだね」

「あざっす」

「ということで~、今日の総合評価は、45点!」

 

 

「今日は実践っていうよりかは、ほとんど講習になっちゃってたからね」

「はい...」

「この評価の紙は次回持ってくると1000円割引になるからね。大切にしてね」

「あざっす」

 

評価表を私に手渡すと、先生は鞄を手に取り、帰り支度をし始めた。

 

「どうする? ホテルは一緒に出る?」

「んー、ちょっと一人で反省してから帰ります」

「そうなんだ(笑) 良かったらまた勉強しに来てね」

「はい...!」

 

先生が玄関の方へと歩み出し、ヒールを履き、こちらの方を振り返って笑顔で手を振ってくださった。「今日はありがとうございます。本当に勉強になりました」最後に心から感謝の言葉を先生に伝えることができた。先生が背中を向けて部屋から出ていき、ドアがゆっくりと閉まっていった。先生のヒールで歩く音が、ドアの向こう側で響いていた。その音は徐々に遠く離れていき、やがて聞こえなくなった。私は改めて、先生から頂いた45点のクンニの評価表を見た。

 

 

山吹も 菜の花も咲かぬ 小庭哉(やまぶきも なのはなもさかぬ こにはかな)

 

 

 

 



タピオカジュースと4人のヘルス嬢

 4月のとある日。その日は夏のような気候で、池袋の某デリヘルを利用した。やってきたのは、黒髪清楚系の、私よりも3~5歳くらい年上のお姉さんだった。ホテルのインターホンが鳴ってドアを開けると、お姉さんの顔が見えるよりも先に「今日は暑いね~!」という声がドアの隙間から聞こえた。ドアを開けてからこちらの顔が見えるより先に話をし始めてきたデリヘル嬢はこれまで2人だけ会ったことがあり、2人とも常軌を逸するほどに明るい性格の女性だったが、彼女もまた例に漏れず明るすぎてキマッているような表情をする女性だった。

 部屋に入るなり彼女がベッドの上に腰を掛けたので、私も隣に座った。

「ねぇねぇねぇねぇ!私ね、この前はじめてタピオカジュース飲んだの!飲んだことある!?」

「飲んだことないです、最近流行ってるみたいですよね」

「うん!飲んだことないなら、 今度飲んでみてよ!」

「そんなに美味しかったんですか?」

「うーん、そうでもなかったんだけど」

「じゃあなんで勧めてくるんですか?」

「お兄さん飲んだことないなら、はじめて飲んだ時の感動を共有したいと思って!私が今日はじめて飲んだから、ただそれで感動してるだけなの!」

どうやら、タピオカそのものよりも『流行っているタピオカを初めて飲んでみた』という体験の新規性を共有したいようだった。自分の欲望のあり方に関してえらい自覚的で、明瞭な話し方をしてくる人だと思った。ちなみに、彼女のプレイはめちゃくちゃにエロかった。

 

 3日後、池袋の某ヘルス店に行った。小雨が降り、肌寒い日だった。平成最後の日だった。フリーで入ったら、凄く身体の線の細い子がやってきた。会っていきなり「私、胸小さいけど大丈夫ですか?」と言ってきた。挨拶よりも、名を名乗るよりも先に、そのように言われた。「さっきもね、お客さんに『細すぎるだろ!』って凄く怒られたの!」そう言いながら、苦笑いよりかは少し嬉しそうな笑みを浮かべるような女の子だった。プレイが終わった後、ベッドに寝転びながら、互いの出身地の話をしていた。彼女は最近、地方から越してきたようだった。それから急に、タピオカの話をし始めた。

「ねぇ、タピオカ飲んでる人ってバカだと思わない? 流行ったからって、みんな急にお店の前に並びだすんだよ。大して美味しくもないのに。本当はあの人たちはタピオカを飲みたいんじゃないと思うよ。東京の人ってバカばっかり。あの人たちは、自分が本当にハマってるものとか、無いんだと思う」

こんなにも東京の人間に偏見を持っている子が未だに存在しているのかと思いながらも、よくよく考えれば私も上京したての頃は同じようなことを考えていたのを思い出した。

「うーん、じゃあ君は何が好きなの?」

カニカマ!知ってる?セブンイレブンカニカマ、凄く美味しいんだよ。今日も持ってるよ!」

そう言いながら、彼女は鞄の中から5本入りのカニカマと、練りからしのチューブ、それから、生しょうがのチューブを取り出して見せてきた。カニカマは、ドン・キホーテカニカマだった。ちなみに、彼女のプレイは破壊的にエロかった。

 

 次の週の仕事終わり、また池袋でデリヘルを利用した。もっと言えば、池袋でもどこでも派遣してくれるデリヘルを利用して、池袋に呼んだ。19時半の予約をして、18時半にお店に1時間前の確認の電話をし、スムーズに19時20分にはホテルに入って、部屋番号をお店に伝えた。予定通り19時半ちょうど辺りに女の子が来て、挨拶をすると「昨日の夜に『明日19時から予約入ってます』ってスタッフに聞いたんだけど、お兄さん今日来る時間マジ間違えたん?」って、理不尽にキレられた。お嬢様のような明るい色の清楚なワンピースに、ピンク色のキラキラしたリュックを背負ってる、20代中盤くらいの、いわゆる〝女の子らしい〟女の子だった。「可愛いですね」って言ったら、「いや、私、中の下だから!」って、すごい剣幕で言われてしまった。それでも「いやいや、可愛いですよ」って言ったら、「フフッ、フフッ、そんなことないよー」って少し笑いながら言ってくれた。顔を上向きにして肩を震わせながら「フフッ、フフッ」って、低い声で笑う女の子だった。

 プレイが早く終わってしまったので、布団の中に潜りながら会話をした。布団を掛けるには室内が暖かすぎて、太ももに汗が滲んでいた。

「最近ね、女性用風俗に行きたいと思ってんの」

「そうなんだ、相手が男性のとこ?」

「そう」

「へぇー、そういうの行ったことないんだ?」

「うん、今までは歌舞伎町のホストにハマってたけど、もうホストは22の時に飽きた」

「そうなんだ。ホストにハマってた人で、女性用風俗に目覚めた人の話もたまに聞くよ」

「わかるー、だってホストみたいなかっこいい人いるし、1対1で相手してくれるんだよ?」

「それは嬉しいよねぇ」

「しかも、2時間で2万もいかなかったりするからね。サンキュー並みじゃね!?」

なんてヘルス嬢的なフレーズなんだろうって思った。『サンキュー』ってのは、30分3900円を謳っている激安デリヘルのことだ。1年前、レズ風俗に行きたがってる池袋のホテヘル嬢と話をした時、「デートコースより前に、まずはヘルスコースで様子見っしょ」と言われ、この子はなんてヘルス嬢的なんだと思ったが、女性用風俗の話をした時に「サンキュー並みじゃね!?」というフレーズが出てきた彼女は、もっとヘルス嬢的な人だと思った。

「はぁ~、最近働きすぎて疲れてるの」

「そうなんだ」

「来週末、大きなお金が必要だからさ。今週は睡眠時間削って、頑張って出勤増やしてるの」

「大変だねぇ」

「はぁ~、タピオカ飲みたい」

彼女は、疲れているようだった。それから、シャワーを一緒に浴びてホテルを出た。「フフッ、フフッ」って、低い声で笑う彼女だったが、素股で腰を振っている時だけ急に高くてか弱い声を出してきたので、ギャップがエロかった。別れ際に「凄くエロかったですよって言ったら、「それ、いい意味だろ。ありがとな」って言われた。

 

 また次の週の土曜日に、池袋のデリヘルを利用した。茶髪のロングヘアの、20代前半でも後半でもおかしくないような、年齢不詳系のきつい顔の美人さんがやってきた。

「お兄さん、今日仕事なん?」

「夕方からちょっとだけね」

「仕事の前に抜いてちゃんと仕事できるん!?」

「むしろ仕事の前に抜いた方が集中できますね」

「まじかぁ、お兄さん面白いなぁ」

「お姉さん、めちゃくちゃ喋りやすいですね」

「九州の飲み屋で働いてたからなぁ」

「だからそんなに声が低いんですか?」

「これは元からや!」

 

こちらが服を脱がせば、大きく万歳をし、ベッドに入れば、上半身を仰け反らせながら大きく伸びをするような、自然体な女性だった。プレイが終わって、シャワーと着衣を終え、時間が来るまでソファに座って喋っていた。

 

「なぁお兄さん、私よくSって言われるんだけど、Sやったと思う?」

「Mなんじゃないすか。Sっぽく見えるのは、顔がきついだけで」

「ふふっ、そうかもなぁ」

 

タイマーが鳴って、一緒にホテルを出た。この日は、池袋北口にある、安くて、部屋がいっぱいあって、風俗嬢と風俗客ばかりが出入りするホテルの、9階の部屋を利用していた。廊下で待っていると、下りのエレベーターが9階に到着した。

 

「エレベーター途中で誰か入ってくるかなぁ」

「風俗客ばっか使うホテルだから、途中で止まると思うよ」

「それじゃあ私、止まらない方に賭けるわぁ」

「止まるっしょ」

 

そのままエレベーターは一度も止まることなく、1階に到着した。

 

「やったー、私の勝ちやぁ」

「止まらないなんて珍しいわぁ」

 

1階に到着してエレベーターのドアが開くと、3人の女性が縦1列にエレベータの前に並んでいた。みんなスマホをいじりながら、下を向いていた。ラブホテルに1人で来ているということは、デリヘル嬢かもしれなかった。

 

「ターピオカ飲みてぇぇええええっ!」

 

フロントに鍵を返しに行く途中、急に隣を歩いていた彼女が天に向かって叫び始めた。突然どうしてそんなことを言いだしたんだという思いと、ヘルス嬢連続タピオカ記録を4に伸ばせたことのおかしさもあり、「なんで!?なんでそんなこと急に言いだしたの!?」と聞いたところ、先ほどエレベーターから出た時にすれ違った女性3人の内の1人が、タピオカジュースを飲んでいたからということだった。ちなみに、彼女のプレイは快活にエロかった。

 

 

ぽっちゃり店のデリヘル嬢。あるいはフェラ呼吸について。

 70kgくらい体重があってもおかしくないデリヘル嬢が、私の身体の上に跨った。確かな重みを感じる、騎乗位素股だ。この日は、池袋のぽっちゃり店を利用していた。誤解してほしくないのは、上に乗られて体重の重みを感じたのは、別にデリヘル嬢がぽっちゃりしているからとうわけではない。これは、下にいる人間に対してどのくらい自分の体重を乗せても平気なものだと思っているのか、上に乗っかる側の塩梅の問題なのである。現に、以前も別のぽっちゃり店のデリヘル嬢に上に跨られた時は、驚くほど何の重みも感じなかった。

 私はお腹のあたりに確かな重みを感じながら、上から見下ろしてくるデリヘル嬢の顔を真っすぐに見つめた。もしも彼女が、全く重みを感じさせないほどに完璧な騎乗位素股をしてくるような人だったら、彼女の顔を真っ直ぐに見つめることなんてできなかっただろう。そんなに配慮のよく行き届いた人間と目を合わせてしまったら、全うに、至極全うに、私が私の顔から読み取られてしまいたくない何かを、すぐに読み取られてしまうに違いないからだ。そうではないと思ったからこそ私は、彼女の顔を安心して真っすぐに見つめることができた。私が彼女の目を見つめてしばらくすると、彼女は腰を動かすのをやめ、上から覆いかぶさるように私に抱きついてきた。私は先よりもさらに、お腹から胸の辺りにかけてズシリとした厚い重みを感じ、少し息が詰まった。彼女は、少しもためらうことも恥ずかしがる様子もなく、無表情で

「おっぱい当たってるねぇ~」

と、言葉を発した。彼女はGカップだった。確かに、彼女のおっぱいは潰れるように、私のおっぱいにギュッと当たっていた。しかし、いや、「しかし」という接続詞がここで妥当なのかは甚だ疑問の残るところだが、彼女の下っ腹も、おっぱいと同じか、あるいはそれ以上のボリューム感で、私の下腹部を圧迫していた。「おっぱいが当たっているね」と言う時、私たちは暗黙のうちに〝別のところは当たっていないのにも関わらず、おっぱいだけは当たっている〟という、他の身体部位とは異なるおっぱいの感触の特殊性を味わっている側面がある。おっぱいと非おっぱいのギャップを楽しんでいる、と言い換えてもよいだろう。しかし、ぽっちゃりした彼女の場合は、紛れもなく〝おっぱいも、お腹も同時に当たっている〟のであり、そこではお腹が、おっぱいのおっぱい性を侵食するように剥奪し、おっぱいの特殊性は限りなく失われていた。しかしそれと同時に、おっぱいはやっぱりおっぱいで、お腹はやっぱりお腹であることに変わりはなく、彼女が言うように、おっぱいが私の身体に当たっていることも疑いようのない無い端的な事実であった。

「おっぱい当たってるぅ〜↑↑↑」

と、返事をして改めて彼女の顔を見ると、20代後半くらいだと思っていた彼女が、おそらく30代前半くらいの女性であることに気づき、それから、かなりの薄化粧であることにも初めて気がついた。

「すごい、薄化粧なんだね」

「動いてると、すぐ汗かいちゃうから」

そう言って彼女は身体を起こし、再び腰を振りはじめた。しばらくすると「はぁっ、はぁっ、はぁっと、喘ぎ声というよりかは、ただただ呼吸が荒くなってきたような荒い声をあげ、彼女の上半身にうっすらと汗が滲み始めた。

「フェラ、するねっ!」

唐突にそう言うと、彼女は後退して私の両脚の間にうずくまり、フェラチオをし始めた。「ふぅ〜っ、ふぅ〜っ、ふぅ〜っ」と、まるで私の尿道に息を吹き込むかのように男性器を咥え始めた彼女は、おそらく、自分の呼吸を整えるためにフェラチオをしていた。俗に言うところの〝フェラ呼吸〟というやつである。しばらくのフェラ呼吸の後、「最後はお口か素股かどっちでイキたいっ!?」と彼女が聞いてくれたので、「素股で!」と応えた。私は、彼女が騎乗位素股で疲れてしまっていることに薄々気づいていたし、素股をしたいならば正常位素股をすることだってできたが、それでも変わらず彼女に腰を振ってもらって自分はマグロで居続けるという罪を犯してしまった。古代ギリシアの哲学者であるアリストテレスは、宇宙の運動の根本原因でありながら自らは何者にも動かされない神のことを『不動の動者』と呼び、そうした状態のことを『神的な生活』と表現したが、ラブホテルという宇宙に於いては、まさにマグロこそ『不動の動者』であった。

 

形而上学〈上〉 (岩波文庫)

形而上学〈上〉 (岩波文庫)

 

 

ただの一人の人間である私が『神的な生活』を送ろうとする、そうした態度は不遜な態度に他ならないが、それでもやはり私はマグロで居続けて彼女に動いてもらうことを選択してしまった。そんなマグロの上に再び彼女が跨り、腰を振り始めた。彼女の額には、露になった汗が光っていた。彼女は身体の前面で男性器を手で持って腰を振ったり、お尻の後ろの方で男性器を持って腰を振ってみたりしてくれたが「はぁっ...、はぁっ...、はぁっ...」と、先よりも早く、20秒ほどで息を荒げはじめた。

「ローションフェラ、するねっ!」

そう言うと、彼女は再び後ずさりをし、今度は口の中にローションを含めながら「ふぅ〜っ、ふぅ〜っ、ふぅ〜っ」と、呼吸を整え始めた。俗に言うところの〝ローションフェラ呼吸〟である。エラ呼吸をするマグロと、フェラ呼吸をする彼女の、神的な性活。彼女は呼吸が整った頃になると、今度は何も言わず、目の前にいるのはただのマグロだという現実を素直に受け入れたように、あるいは、神の前では人間はそうするしかないように、再び私の身体の上に跨って騎乗位素股をし始めた。蓄積した疲れからか、はたまたマグロに対する怒りからか、もはや騎乗位素股というよりも、上から私の顔を一直線に見下ろしながら、ただただ激しい手コキをし始めた彼女。腰を振る必要のないライトな動きではあったものの、それでも彼女は相変わらず全身に汗を浮かべながら「はぁっ...、はぁっ...、はぁっ...」と息を荒げていて、そんな彼女の額で煌めく汗を眺めながら、私は射精した。すると彼女は、マラソンを完走した後の選手のような激しい息遣いと燃焼感と共に、うつ伏せの体勢になるようにベッドにダイブした。彼女が疲れているのはわかってはいたものの、それでもたくさん動いてもらう方を選んでしまったことを謝ろうと思い「たくさん動いてもらっちゃって、ごめんね」と言おうとした時、先に彼女の方が口を開いた。

「はぁ…、はぁ…、はぁ…、ごめん、はぁ…、ごめんね。ちょっと...気持ちよすぎて…息が...。はぁ…、はぁ….。気持ち....よすぎて…。。。

そんなわけ、ないだろう。やっぱり、この人と目を合わせて良かった。